主食。

□輪廻転生
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ときどき、夢を見る。



変な着物を着て、黒髪の男と居る夢。



誰なのか知らない。



でも、何故か懐かしくて……。




《輪廻転生》




――――ピピッ
ピピピピピーッ!

「どぉわぁぁ!!」

坂田銀八は大音量で響く目覚ましの音で目を覚ました。

「んだよ…まだ6時…そういやぁ今日だっけ……?」

カレンダーをチラリと見る。
4月6日。
始業式の日だ。
銀八は、前の攘夷高校から急遽銀魂高校に移動となった現国教師だ。

「あー…ねみぃ……」

春休み中に銀魂高校は何度か訪れたが生徒と対面するのは今日が初めて。
校長曰く、担当は3年らしい。

しかも、そうとう問題児のいる。

銀八はベッドからのそりと起き、身支度を始めた。

―――――…

身支度を終え学校へ。
その際思うのが夢の事。
最近よく見る夢。
必ず変な着物を着ている自分と、黒髪の男が出てくる。
内容はバラバラ。
ただ、見たあとに残る懐かしさだけが切なかった。

「なんなのかなー……」

原チャリを運転しながら、銀八は考えた。
原チャリも、何故か惹かれた。
乗用車より原チャリの方が直感的に乗りたいと思ったのだ。

「つか何で男…どうせなら美女にしろよー」

原チャリの音で銀八の嘆きは消された。

―――――…

始業式も終わりやっと教室。
3年Z組だ。
教師のいない教室は生徒のもの。
廊下まで騒ぐ声が聞こえた。
銀八は溜め息を吐き、扉を開けた。

「おーい、オメェらギャーギャー騒がしいんだよ。中2のノリかコノヤロー」

銀八は攘夷高校の時からこんなノリだ。
所詮相手は高校生。
どんな態度をとっても同じである。

「あ、新しいセンコーアル!!」
「何?白髪?」
「死んだ魚の目ェしてまさァ」
「つかなんで白衣?」

銀八が教室へ入ると更に騒がしくなった。

「はーい、今日からオメェらの担任になりましたー、坂田銀八でーす」

間延びた自己紹介をする銀八。
一応一人ずつ顔を見ていく。
眼鏡やチャイナやドSやマダオやゴリラ……。
その中に、黒髪の男がいた。

何故か懐かしい。
それでいて、苦しい。

その黒髪が手を挙げた。

「はい、えーと…多串くん」
「誰が多串だコラ」

その声さえも懐かしくて。
でも理由が分からなくて。

なんてもどかしい。

「なんだよ多串って」
「なんかこう…オメェの顔見たら浮かんだんだよ、多串って」

本当、浮かんだ。
当たり前のように。

理由が、分からない。

「いい名前じゃないですかィ、多串くん」
「おい、死にてェのか総悟」

銀八は込み上げる謎の感情を押し殺した。

「ほら、席着けー」

皆自己紹介をして、黒髪は土方十四郎という名前だと知った。

―――――…

ブロロロロロ……っ

「もやもや…する。つかなんで懐かしいんだァ?」

帰宅中、銀八は原チャリを運転しながら呟いた。
土方なんて知り合いはいない。
でも、どこかで会ったことのあるような気がした。

「なんなんだよー、多串くーん……」

解は出ないけど、俺は、知ってる気がする。

―――――…

また、夢を見た。

『ぎ――……銀―…』

名前を、呼ばれている。

『銀―……銀時…』

ぎ…んと……き…?

『んだよ、…――た……』

俺は誰を呼んだ?
お前は…誰なんだ……?


謎の夢は頻繁に見るようになった。

決まって出てくるのが黒髪の男。

俺を銀時と呼ぶ、男。

―――――…

「なんなんだよー、多串くん」
「何がだよ、つか俺は多串じゃねぇ」
「金魚大きくなった?」
「なんで金魚!?金魚なんか飼ってねぇよ!!」

銀八は土方に尋ねたが、解はでるわけもなく。
また1人、考え込むのだった。

「パフェ食いたい、多串くん奢って」
「生徒にたかる気か!?」

それでも時間は流れてく。

―――――…

血だらけだ。

俺が。

黒髪の奴が泣きそうな顔して俺を見ている。

『銀時……っ』

そんな顔すんなよ、土方…。

土方…?

ひじ…か…た……?

『んな…泣きそうな顔すんな…、らしくねぇよ…』

ああそうか。土方だったのか。

『来世で…も愛し合おうなんざ……言わねぇけど…よ、俺は…死んでも来世でも…土方……十四郎の事は…忘れねぇよ……』

だから、泣きそうな顔すんな……。


夢はそこで途切れた。

―――――…

銀八は飛び起きた。
土曜日にも関わらず、起きたのは6時。

会いたい、人が居る。

目指すは土方の家。
銀八は原チャリを飛ばした。

会ってどうしたいのか分からない。
でも会いたいと思った。

土方のマンションに着くと、銀八はインターホンを連打した。

「朝からうるせェんだよ!」

土方が怒鳴りながら出てきた。
土方は短パンにTシャツという格好だ。
銀八はお構いなしに抱き締めた。

「おい…銀八!?離せよ!!」

土方は暴れるが、銀八はものともしない。

「銀時って呼んで」
「はァ?」
「銀時って…呼んで…」

銀八の切なそうな声。

土方は銀八に抱き締められたまま。

「おい…"銀時"……」

ああ、土方だ。

「なんだよ…満足か?これで……」
「土方…オメェはずりィよ。なんで忘れてた、こんなにも好きなのによォ」

夢に見るまで恋い焦がれていてやっと思い出したのに、当の君は覚えてなんかいない。



End.


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