主食。

□It doesn't love.
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紅桜の騒動のあと、銀時と共にルパンの如く無事着陸をした桂。

「おい、ヅラ。これからどうすんだ?」
「ヅラじゃない、桂だ。俺はこれから行かねばならん所がある」
「そーかい。んならこれで解散だな」

銀時は何かに気づいたようだが、深くは突っ込まずそのまま闇へ消えていった。
桂は銀時の消えた方向をちらりと見たあと、逆方向へ歩きだした。

建物と建物の間の暗闇の前で立ち止まる。

「…貴様はいつからそこにいた」
「なんだ、気づいてたのかよ」

そう言いながら出てきたのは土方だった。
暗闇で表情は見えないが、機嫌は余りよろしくない。

「…何の用だ、芋侍」
「安心しろ、しょっぴいたりなんざしねぇよ」

土方は桂の手を握ると歩き出す。

「何処に連れていく気だ!?」
「その血塗れの身体じゃ何処にも連れていけねぇだろ。洗い流すのが先だァ」

そう言われて手を引かれて歩く。

15分程歩いて着いたのがホテル。

「何故こういう所なんだ…」
「こういう所しか開いてねぇんだよ」

土方はさっさと部屋を選び、桂の手を引く。
部屋に着くと、土方は桂の着物を脱がせた。

「…っ離せ!!自分でできる!」
「いいから黙ってろ」

土方は桂の着物を脱がし終わると、自分も隊服を脱いだ。
シャワールームへ行くと、湯を張りながら土方は桂の身体をまじまじと見た。

「大きな傷はあんまりねぇみたいだな…」
「…見るな変態……っ」

桂の傷痕を指でなぞり、なぞったそこに舌を這わせた。

「…や、め……っ」

ビクリと桂の身体が反応する。

「意識すんなよ、只の消毒だ。俺ァ風呂でヤる気なんざねぇよ」

土方は桂の傷痕を舌でなぞり終わると、桂の身体を丁寧に洗った。
桂は渋々だが、土方のされるがままにしていた。
土方も洗い終えると、先程張った湯へ身体を浸した。

「桂ァ……」

土方は、ホッと息をついた。
高杉一派に桂が斬られたという噂を聞いたとき、いてもたっても居られず屯所を飛び出した。
行きつけの蕎麦屋もいつも会う場所も何処にもいない。
その上、万事屋は負傷。

「死ぬわけねぇとは思ってたけどよ……」
「なんなんだ貴様は…俺があんな高杉ごときに殺られる訳がないだろう」

それから数日土方のテンション低く、沖田のからかいには持ってこいの雰囲気だった。

風呂に入ったまま土方は桂を後ろから抱き締めた。

「無茶、してんじゃねぇの?」
「無茶などしていない」
「(即答かよ)」

土方は桂の短くなった髪を指で鋤く。

「んだよこの髪は」
「イメチェンだ」
「…そーかよ」

どきどきこの男が分からなくなるときがある。
桂小太郎。
攘夷志士、幕府の敵、俺に抱かれる男。

土方は抱き締めたまま桂に言った。

「桂、お願いだからあんまり危険なことするな」
「土方……?それは幕府の犬の言う台詞ではないだろう」

分かってる。

「恋人でもあるまいし…」

分かってる。

「こんなの恋じゃねぇよな」
「あぁ…」

会うたびに確かめる。

これは恋じゃない、と。

「誰が貴様なんか好きになるか」
「それはこっちの台詞だ」

幕府とテロリスト、攘夷志士。

許されないんだ、恋なんざ。

どうか、

「(好きになるか、か……)」

どうか、

「(俺が――…)」

どうか、

「(本気だと言ったらどんな顔するんだろう)」

恋じゃありませんように。

「(テロリストに本気の恋なんざふざけてらァ)」





(ーーそれでも生きてたことに安心した自分は本気かもしれない)




End.
 

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