主食。

□Melancholic
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ザァー……っ

憂鬱だ。
雨は憂鬱だ。
特に見廻りが。

「憂鬱……」

俺は灰色に染まり、これでもかというくらい雨を降らす空を窓辺に座って見上げながら言った。

見廻りは車を使わなきゃなんねぇ。
車なんか使ったらサボれなくなる。
旦那のとこへ、行けなくなる。

「憂鬱だァ……」
「雨だと万事屋の旦那のとこ行けませんもんねー」

あり、山崎。

「……てめェ何会話入ってんだァ?」
「すすすすすみません!!」

でも殺る気はない。
そんな気力さえも奪う雨。

「憂鬱……」
「ですね」

山崎と二人、窓辺に座って空を見る。
今日は1日中雨らしい。

「…死ね山崎」
「何でですか!?」

見廻りまであと15分。

「沖田さんって万事屋の旦那のどこが好きなんですか?」

山崎のくせになんてこと聞きやがる……っ。
普段なら絶対言わねェけど、雨だしなんか苛々するから言った。

「……優しい、とこ」
「…(やさ…っ!?)」

確かにちゃらんぽらんで掴みどろこないし、俺が見えないところで何やってんのかも知らねぇ。
Sだし、人に奢らせるし……。
でも。

「旦那のことは何も知らねぇけど、旦那の優しいところは誰よりも知ってるつもりなんでィ」

触れる指、抱き締める腕、ぶっきらぼうだけど優しい言葉。

「ザキィ、俺ァ旦那の良いとこも悪いところも含めて旦那が好きなんでさァ」

普段なら言わねェよ、こんなこと。
今日は雨だから言うんでィ。

「旦那に、会いたいですか?」
「あ、当たり前でィ。でも、今日は会えねぇや……」

俺たちの間に約束なんてない。

「……!沖田さん、そうでもないみたいですよ」

山崎が部屋の戸を開いた。

「よォ、沖田くん」
「だ、旦那!!」

聞かれてねぇよな……?

「いつからここに?」
「たった今来た。会いたかった?」

そう言って旦那は俺を抱き締めた。

「べ、別に会いたかったなんて思ってねェ…けど……」

嘘です旦那、本当は会いたかった…。

「ん…?」
「……嬉しかった」

山崎は空気を読んでどっか行った。

「そっか…」

旦那は俺の頭を撫でる。

「好きです、旦那」
「!?俺も…好きだよ」

普段なら絶対言わねェ。
今日は雨だから。

雨だから。

「旦那…キス、したい」

旦那はびっくりした表情をした。

「うん、いいよ」

俺は旦那のくれる甘いキスに応えた。


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