主食。

□夜叉をも惑わす恋の情
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ぴんぽーん。

午後2時、万事屋のチャイムが鳴った。

がらがら……っ

「総一郎くん、今日はえれェ早ェな」

予想通り沖田くん。
にしても、いつもは3時に来んのに…。

「総悟です。旦那ァ、ちょっくら匿ってくだせェ」

匿ってって言うか…

「どうせ見廻りのサボりだろ?」
「アタリ。流石旦那でさァ」

そう言いながら沖田くんは中へ。
沖田くんが万事屋に来るのは殆どが見廻りのサボり。
まァ…頼られてると考えりゃァ嬉しいんだけどねー。

「つーわけでサボっててもいいですかィ?」

沖田くんはアイマスクを片手に言った。

「いいよ、沖田くんなら一生居ても
「一生は無理でさァ。土方さんが寂しがりやす」

2言目にはやっぱり多串くんか。

「だよなー、多串くん寂しがっちゃうもんねー」

俺はそう言いながら沖田くんの頭を撫でた。
沖田くんはされるがまま。

「(綺麗な髪……)」

本当、多串くんには勿体ない。

「…旦那ァ、1個聞いて欲しいことがあるんでィ」

身長差的に上目遣い。
可愛いなぁ、もう。

「んー?どうしたの?オニーサンに言ってみなさい」

俺は沖田くんの座るソファーの向かい側に座った。

「土方さんが浮気した」

え?

「なっ!?沖田くんという可愛い彼女がいながらも!?」

なんか…沖田くん心なしか落ち込んでるように見える。

「誰が彼女でィ。…この前女と街歩いてんのを見たんでさァ」

淡々とした口調。
だけどやっぱり悲しそうで。

「銀さんならそんな思いさせねぇのになァ……」
「旦那?」

俺は沖田くんの横へ移動した。

「やめちゃえば?浮気する人なんて……」

沖田くんの頬に手を添え、唇を近付ける。

―――がららっ!!

「おい、総悟!!」
「…なんちゅータイミングなんだ」

多串くんが来た。
ずかずかと中へ。

「また万事屋なんかに来やがって…帰るぞ総悟」
「へーい」

沖田くんは嬉しそうだ。
なんかムカつく。

俺は沖田くんの腕を引っ張り、頬に軽くチュッとキス。

「な……っ!?」
「旦那ってばだいたーん。じゃ、これでお暇しまさァ」

呆然とする多串くんを連れて、沖田くんは万事屋を出ていった。
沖田くんが居たのはたったの5分。

「あーあ……」

沖田くんが今日早く来たのも多串くんが焦って探しに来たのも大方予想がつく。
沖田くんが早く来たのは、見廻りで屯所を出てすぐ万事屋に来たから。
多串くんに気にかけて欲しかった、嫉妬して欲しかった、多分そういう理由。
多串くんは、沖田くんに(浮気現場的なの)見られてるの知ってたんだろうなー。

「可愛いなぁ、沖田くん…」

あからさまに見せつけられて…それでも……。

「俺のモンになんねぇかなぁ…」


手に入らないと分かっていても、君を愛しく感じるよ。


《夜叉をも惑わす恋の情》



End.

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