主食。

□True love
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「ヅラ子、アンタ最近好きな人でも出来た?」

べべんべん

三味線の鳴り響く某オカマバー。
ヅラ子、あずみ、パー子は扇子を片手に躍りの練習をしていた。
ヅラ子…基桂は踊る手を止め、あずみを見る。

「は?何を言っているのだあずみ。そんなわけないだろう」
「何ヅラ、恋してんのか?いやー青春だねー」

パー子基銀時がニヤニヤと笑みを浮かべながら桂を見る。

「ヅラじゃないヅラ子だ。だから恋などしておらぬと……」
「もう!嘘つかないで頂戴!!だってヅラ子最近綺麗になったもの」

あくまでも言い張るあずみ。

「だから恋などしておらぬと言っているだろうアゴ美!!」
「誰がアゴ美だコラ、あずみだボケェェェ!!」

ガシャァァァァァン!!

「ぐはぁぁぁぁ!」

あずみはその場にあった花瓶を掴み、桂にスパーキングした。

―――――…

「まったく…銀…パー子もあずみも……。断じて恋など…」

お使いを頼まれた桂は花瓶のぶつけられた額を擦りながら、ヅラ子の姿で歌舞伎町を歩いていた。

どんっ

と、すれ違い様に誰かの肩にぶつかった。

「…っと、すまぬ」
「あ、いや、こっちこそ……って桂?」

ぶつかったのは土方だった。

「なんだ芋侍か。……見廻りか?」
「オメェはオカマバーでバイトかァ?攘夷志士が何やってんだよ……」
「貴様には関係ない……なんだ?」

土方が桂の額を見ている。

「なんだァ?また暴れたのか?」

少し赤くなっている額を指でなぞる。

「暴れてなどいない。あずみが…俺が恋してるだのなんだの言うから……」
「…好きな奴が居んのか?」

土方は桂を見つめて言う。
いつもと違い、真剣な表情を見せる土方。
桂は思わず目を逸らした。

「……こっち見ろよ」

桂の腕を掴み、土方は静かに言った。
色んな人が行き交う歌舞伎町で、土方と桂の周りだけ雰囲気が違った。

「……っ離せ」
「こっち見ろ」

脅すわけでもなく、尚静かに言う土方。
桂は視線を外したまま。

「…っち、こっち見ろって!」

土方は桂の頭を後ろから掴み、無理矢理視線を合わせた。
紅の塗られた唇、ほんのりと紅い頬。

「(女装してても綺麗なモンだな…)」


愛しくて仕方ない。


「……っだから嫌なのだ」

ばっ!!

桂は土方に掴まれた腕を振り払った。
心なしかさっきより頬が紅い。

「そんな目で俺を見るな!!」
「桂……?」
「そんな…愛おしいような目で俺を見るなと言っているんだ!」

突然の事に呆然とする土方を気にも止めず桂は続ける。

「その目を見ると心臓がおかしくなる……っ。まるで俺が…土方を好きみた……っ!?」

桂はそこまで言うと口をつぐんだ。

「お前…今……」

土方は驚いたように桂を見つめた。

「な、なんでもない!!今のは…って……土方!?」

土方は珍しく顔を真っ赤に染め弁解する桂の腕をまた掴み、路地裏へと連れ込んだ。

「何を……っん…ちょっ…」

隊服の袖で桂の唇の紅を拭う。
そして桂が一言も発さないうちにその唇を塞いだ。

「……ん…っ…」

桂は驚き目を見開いたが、そのまま欲に従い目を閉じる。


最後に会ったのは紅桜の後だったか……。


唇を離すと、土方は桂を愛おしそうに抱き締めた。

「俺のこと、好きなのか?」
「…好きじゃない」
「嘘つくなよ」
「…嘘ではない」

桂のさらさらの髪を柔らかく撫でる。


…てっきり桂は全てに無関心だとばかり思っていた。
これは恋じゃない、叶わない恋だと……。


「…好きだぜ桂」
「……貴様なんか好きにならんと言ったはずだ」

台詞とは裏腹に、土方を抱き締め返す桂。

「俺は、好きだ」


初めてお前をこの手で抱いてからずっと―――


「…ふん、芋侍のくせに」
「なぁ、このまま拐っていってもいいよな」

土方はさっきよりも強く桂を抱き締めた。

「勝手にしろ…」
「ああ、勝手にすらァ」

土方は桂を抱き締めたまま柔らかく微笑んだ。



End.(13.01.26)

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