短編夢小説V

□幼女は大好物
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―ガチャッ・・・キィィィ





店の扉が開く。





葬儀屋はその先に立っている人物を見た途端、ニィッと不気味な笑みを浮かべた。





「やぁ、恵梨華。よく来てくれたね」





「・・・仕事が終わって暇だったのよ」





身の丈に合わないデスサイズをその場に突き刺す恵梨華。





バキバキという音を立てて、床が壊れていく。





「ヒッヒ・・・相変わらず姿に合わないデスサイズを使っているんだねェ〜?」





床が壊されたにも関わらず、葬儀屋は全く気にしていない様子だった。





そして、どこから取り出したのか、葬儀屋の手には既に紅茶が入ったビーカーが握られていた。





「ふふ・・・お気に入りだからね」





恵梨華は扉を閉めると棺の上に腰掛けた。





それを待っていたかのように、葬儀屋は持っていたビーカーを恵梨華に差し出した。





「ん・・・ありがと」





恵梨華は紅茶を受け取ると、そっとソレを上にかざした。





透き通る紅が美しい。





光にチラつかせれば、キラキラと輝きを増していく。





そんな紅茶をうっとりとした目で見つめる恵梨華。





葬儀屋はそんな恵梨華をじっと見つめていた。





「・・・・大人びたその表情もそそられるねェ」





スッと恵梨華の頬に手が伸びる。





「ぐふっ・・・でも小生は・・・」





ニタリと歪んでいく口元。





そんな葬儀屋に、恵梨華はビクリと肩を震わせた。





「ああ・・・・その表情だよ・・・ヒッヒ・・・いいねェ〜・・」





怯えた恵梨華の瞳に、満足げな葬儀屋。





恵梨華は紅茶をゴクリと一口飲むと、不貞腐れたようにフイッと顔を背けた。





「・・・悪趣味」





ぷぅっと口を膨らませれば、葬儀屋の息はどんどん荒くなっていく。





「ヒヒッ・・・・可愛いねぇ〜。言葉と顔のギャップが・・・あぁ、堪らないよォ〜」





恵梨華の顔は童顔だった。





どう見ても幼女にしか見えないその姿が、恵梨華にとっては唯一のコンプレックス。





しかし、葬儀屋はその恵梨華がお気に入りの様子だった。





恵梨華を見つめる目は恍惚なものだった。





「はぁ・・・はぁ・・・・恵梨華・・・可愛いよぉ〜・・」





呼吸を荒くしながら、頬を赤く染める。





その姿、どこからどう見ても変態である。





恵梨華はそんな葬儀屋に、軽蔑の眼差しを向けた。





「ねぇ・・・ずっと気になってたんだけど・・・」





彼の本性が知りたい。





その一心で、恵梨華は勇気を振り絞って声を出した。





「ん〜?何が気になっているのかなあ〜〜〜?ヒッヒッ」





まるで全てを見透かしたような目で恵梨華を見る葬儀屋。





恵梨華はゴクリと静かに息を呑んだ。





「アンダーテイカーって・・・・ロリコンなの?」





嫌な間が空く。





静まり返ったその空間が、空気が、重苦しく感じる。





恵梨華の額をツーッと嫌な汗が流れた。





「・・・・あ、えっと・・・」





あまりにもその空気が気まずくて。





黙り込んでしまった葬儀屋に、必死に声をかけようとする恵梨華。





その時だった。





「ッ・・・・・・?!」





突如、何かに包み込まれる。





それは葬儀屋だった。





「・・・・え・・・・・・あ・・・?」





突然の出来事に、言葉を失う恵梨華。





戸惑う恵梨華をよそに、葬儀屋は恵梨華の耳元にそっと唇を寄せた。





「正〜解。・・・ヒッヒッ、小生は幼い子が大好きなのさ」





低く、そして甘く語られる真実。





聞いてはいけない事を聞いてしまった気がして。





恵梨華の顔からは血の気がサーッと引いていった。





「でもどうしてバレたのかなあ〜〜〜?」





パッと恵梨華を解放すると、葬儀屋はケタケタと笑い出した。
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