短編夢小説V

□もしも葬儀屋がツンデレだったら
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今日も始まる憂鬱な時間。





そう、解剖の授業だった。





そのグロテスクな授業が、恵梨華は大嫌いだった。





「いいですか?ココが内臓で・・・」





先生がひとつひとつ丁寧に説明していく。





恵梨華は必死に見ようとするが、身体が拒絶する。





そんな恵梨華の耳には先生の声すら届いていなかった。





「・・ぅ・・・・・・・」





目を開けている事など出来ない。





恵梨華は俯きながらギュッと目を閉じていた。





そんな恵梨華の様子を、葬儀屋はチラリと横目で見ていた。





―キーンコーンカーンコーン・・・





放課後、漸く苦痛から解放された恵梨華は気分転換に屋上を訪れた。





「はぁ・・・・」





零れ落ちる溜め息。





恵梨華は気だるそうに、壁にもたれかかるように座った。





「(あーあ・・・こんなんじゃ医者になんてなれないよね・・・)」





自分のひざをギュッと抱え込む。





「(そもそも・・・私は医者になんか・・・)」





幼馴染の葬儀屋が医大に行くと言ったから、付いてきただけ。





傍に居たいが為に努力してきたが、恵梨華はもう限界だった。





「はぁ〜〜・・・」





どうすればいいのか分からず、再び深い深い溜め息を零す。





すると突然、葬儀屋が姿を現した。





「ぐふふ・・・溜め息なんてついてどうしたのかなあ〜〜?」





「ッ・・・・!?ア、アンダーテイカー!?」





驚きを隠せない恵梨華。





目を大きく見開き、葬儀屋を見る。





しかし、葬儀屋は気にしてない様子で恵梨華の隣に腰掛けた。





「ヒッヒッ、そういえばさっきの授業・・・今度のテストに出るみたいだねェ?」





「そ、そうなんだ・・・」





勿論、先生の言葉など全く聞こえていなかった。





葬儀屋にバレないように、恵梨華は心の中で小さな溜め息をついた。





すると葬儀屋は、真剣な表情で恵梨華の方を向いた。





「恵梨華・・・君はどうして医者になろうと思ったんだい?」





その真っ直ぐな視線が苦しくて。





恵梨華はフイッと視線をそらした。





「ん・・・何となく・・ね?」





本当の事など言えるはずがない。





恵梨華は真実を悟られないように、曖昧な返事をした。





「ハッキリ言おう。君に医者は向いていないよ」





「なっ・・・!」





「苦手なんだろう?ああいうのは・・・さ」





図星を突かれ、思わず顔を膝に埋める恵梨華。





二人の間に、気まずい空気が流れた。





そんな空気を破ったのは葬儀屋だった。





「小生はね、将来”葬儀屋”になりたいんだ」





「えっ・・・?」





その意外すぎる言葉に、恵梨華は思わず顔をあげた。





「ロンドンの街は今、物騒だろう?小生はね・・・無残な死体を綺麗にしてあげたいのさ」





空を見上げ、その綺麗な瞳を細める。





その美しい姿に、恵梨華は目が離せなくなっていた。





「それで・・・」





先程まで憂いを帯びた表情をしていた葬儀屋だったが、突然フイッと顔を背けた。





「き、君が嫌じゃなければ・・・小生の助手をして欲しいんだ」





葬儀屋の耳が、真っ赤に染まっている。





それはまるで愛の告白の言葉のようで。





恵梨華の胸は高鳴っていった。





「そ、それって・・・!」





カァッと頬が赤くなっていく。





そんな恵梨華の様子をチラリと確認すると、葬儀屋は咳払いをした。





「か、勘違いしないでおくれ!?恵梨華が医者になれそうにないから仕方なく・・・」





恵梨華の心は期待から一気に転落していった。





「へー・・・・それはどーも」





ジト目で葬儀屋を睨みつける恵梨華。





再び屋上に、気まずい空気が流れた。





「・・・・・・・そ、それで・・・君の答えは・・?」
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