短編夢小説V

□死神を愛した天使-改悪
1ページ/3ページ

―ここは天界―





「はぁ・・・」





泉のふちに座り、大きな溜め息を吐く一人の大天使、恵梨華。





この世の者とは思えない程、美しい天使だった。





長く眩いばかりに輝く銀色の髪。





金色に輝く瞳、それを彩る長いまつ毛。





真っ白なシルクに身を包み、その頭上には天使の輪。





そして背中には、大きく美しい白い翼がある。





「大天使恵梨華様・・・またここにいらしていたのですか?」





ぼーっと泉を眺めていた恵梨華は、ハッとしたように声の主の方を振り返った。





「エクシア・・・恵梨華に何か用?」





まるで吐き捨てるように答える恵梨華。





そんな恵梨華に、エクシアは複雑そうな表情を浮かべた。





「大天使恵梨華様、そのような言葉遣いはお控えください。仮にも貴方は・・・」





エクシアが何かを言いかけると、恵梨華は声を荒げていた。





「お父様の事を言うのはやめて!・・・もううんざりなの・・・」





「しかし・・・大天使恵梨華様は、いずれこの天界を統べるお方・・・」





その言葉の重みに、潰されてしまいそうな思いがした。





生まれたその瞬間から、恵梨華の運命は決まっていた。





偉大なる父の跡を継ぎ、この天界の秩序を守らなければならない。





それが恵梨華の使命であり、運命。





そんな運命に嫌気が差し、恵梨華は再び泉に視線を寄せた。





そこには一人の男が、”葬儀屋”と呼ばれている男が映っていた。





恵梨華と同じ銀色の髪を持ちながら、漆黒の衣服を身に纏う。





微かに聞こえてくるのは、身体が熱くなるような低く甘い声。





「(アンダー・・・テイカー・・・・)」





心の中でその名前を呼べば、堪えきれない程の愛しさが湧き上がる。





そして恵梨華は、何かを決意したかのように、バッと立ち上がった。





「エクシア・・・私決めたわ、人間界に行く」





「なっ・・・!?」





その意外すぎる言葉に、エクシアは言葉を失っていた。





そんなエクシアに苦笑いしながらも、恵梨華は泉に向かって祈りを捧げ始めた。





「泉よ。私を人間界に連れて行きなさい。代償が欲しいならば、私はこの地位も何もかも・・・全てを捨てる!」





「い、いけません!大天使恵梨華様・・!」





「ふふ・・・・エクシア、今まで仕えてくれてありがとうね」





恵梨華の祈りに応えるように、泉は眩いばかりに光り出した。





そしてそのまま、恵梨華は迷いもせずに泉に身を投げ出した。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ