長編夢小説

□数百年後の黒執事
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それから恵梨華はあの時の不安を心の奥深くにしまい込んだまま、毎日を過ごしていた。





「それじゃあ恵梨華、小生はちょっとお客さんを迎えに行って来るからねェ〜?」





「うん!気をつけてねー」





今日は仕事でアンダーテイカーが出かける。





”お客さん”は運ばれてくる事もあれば、アンダーテイカーが迎えに行く事もあった。





アンダーテイカーとの生活も慣れてきた恵梨華。





いつものように笑顔でアンダーテイカーを送り出した。





「さて・・・私は掃除でもしようかな」





恵梨華は掃除の準備をすると、手始めに書斎から掃除を始めた。





「んもう、アンダーテイカーってば何でいつも片付けないんだろう!」





少し口を尖らせ拗ねたように言う恵梨華。





そして深いため息をつきながら、散らかった本を本棚へと片付けていった。





暫く本を片付けていた恵梨華だったが、一冊の本が目に入った。





「(これって・・・)」





悪魔に関する資料だった。





恵梨華は興味津々でその本のページをペラペラめくっていた。





そしてため息をつきながら言った。





「はぁ・・・私も悪魔だったら永遠にアンダーテイカーの傍に居れるのになー・・・」





その時だった。





突然後ろから声をかけられた。





「お困りですか?恵梨華さん」





恵梨華はびっくりして声のする方へと勢いよく振り返った。





そこにはセバスチャンらしき人物がいた。





「セ、セバスチャン・・・?」





「ふふ・・・懐かしい響きですね」





セバスチャンはクスリと笑っていた。





「それより恵梨華さん、悪魔になりたいのですか?」





「え・・・う、うん・・・まぁ・・・」





独り言を聞かれていたと知り、少し焦る恵梨華。





恵梨華の返事を聞くと、セバスチャンは悪魔笑いを浮かべた。





「私は悪魔ですから。悪魔ならば人間を悪魔に転生する事も可能ですよ・・・?」





「ほ、ほんとに・・・!?」





「えぇ。では早速・・・契約をして頂けますね?」





「で、でもどんな内容にすればいいの・・・?」





契約なんてした事がない恵梨華。





セバスチャンに何を願えばいいのか分からない。





「そうですね・・・転生は貴方がもう少し大人になってからのがいいですね」





「そ、そうだね、転生したら成長できなくなっちゃうもんね・・・!」





「そして私はそれまで貴方を守り抜く・・・時が来たら私は貴方の魂を喰らい、貴方を悪魔に・・・」





セバスチャンはご馳走を目の前にしたようにペロリと舌なめずりをした。





「うん・・・!じゃあそれで契約するよ・・・!」





「では・・・新しいご主人様、私に名前を・・・」





「・・・セバスチャン・ミカエリス。私にとって貴方はやっぱりセバスチャンだよ・・・!」





セバスチャンはニヤリと笑っていた。





「ふふ・・・分かりました。では貴方が望むセバスチャンの姿でお仕え致しますよ」





見覚えのある顔、見覚えのある燕尾服。





暗闇から出てきたセバスチャンは、恵梨華の知っているセバスチャンだった。





「互いの体に契約書を刻みましょう・・・さぁ、どこにします?」





「うーん・・・じゃあシエルと同じ右目で!」





「分かりました。少し痛みますが、我慢してくださいね」





セバスチャンは恵梨華の右目に手を当てた。





「う・・・ああああ――ッ!!!」





静かだった書斎に恵梨華の叫び声が響いた。





「・・・これで契約は完了です。私は貴方の魂を喰らうまで・・・どこまでもお供しますよ」





恵梨華の右目は黒色からアメジスト色に変わっていた。





そこにはセバスチャンの手の甲と同じ契約の印が浮かび上がっていた。





「セバスチャン、鏡見たい!」





セバスチャンは持っていた手鏡を恵梨華に差し出した。





「(あぁ・・・これで恵梨華は私のモノ・・・)」





セバスチャンは恵梨華を恍惚な表情で見つめていた。





しかし鏡で自分の瞳を確認していた恵梨華はそんなセバスチャンに気づく事はなかった。
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