短編夢小説V

□非リアには関係ない日
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そしてついに、全てのチョコレートにラッピングし終わった。





「よーし、出来た!」





ニッコリと笑顔でガッツポーズをする恵梨華。





そんな恵梨華とは対照的に、葬儀屋はカウンターに突っ伏していた。





「へぇ・・・・よかったねえ・・・」





口を尖らせ拗ねたように言う葬儀屋。





「うん!それじゃあ、ちょっと届けてくるね!」





恵梨華は大事そうにチョコレート達を鞄に入れると、そのまま店を出て行った。





「ちょ、ちょいと恵梨華・・!?」





呼び止める葬儀屋の声は、恵梨華の居なくなった店内へと消えていく。





「うぅ・・・・恵梨華〜・・・」





耐え切れなくなった葬儀屋は涙目になっていた。





「(バレンタインは好きな人にチョコをあげる日だろう?)」





一人になってしまった葬儀屋の思考回路はどんどん暗く歪んだものへと変わっていく。





「(まさか・・・もう小生のコトが好きじゃないのかなぁ・・・)」





椅子に座っている事も面倒になり、葬儀屋はそのまま床に崩れ落ちた。





「(最初から遊びだった・・?もう恵梨華は小生のモノじゃない・・・?)」





考えれば考えるほど、その思考は歪んでいく。





「(・・・どうせ手に入らないなら・・・いっそこの手で・・・)」





葬儀屋の手にはいつの間にかデスサイズが握られていた。





「(でも・・・動かなくなった恵梨華を手に入れてもねェ・・・)」





動かなくなってしまった恋人を思い浮かべる葬儀屋。





返事の無い、反応も無い、笑顔もない恋人。





そんな恵梨華を手に入れても、悲しみしか残らない。





「(一体どうすれば・・・・)」





必死に考えていると、ある結論に達した。





「ああ・・・小生は何でこんなコトに気付かなかったんだろうねぇ〜?ヒッヒッ」





不気味な笑みを浮かべる葬儀屋。





暗い店内に輝く冷たい燐光。





「み〜〜んな・・・居なくなってしまえば・・・ヒヒッ、恵梨華は小生のモノ」





スチャッと大鎌を持ち直し、葬儀屋が出かけようとしたその時だった。





「ただいまー、アンダーテイカー」





扉を開けたのは葬儀屋ではなく、恵梨華だった。





その姿を見た途端、葬儀屋は目を見開いて思わず持っていたデスサイズを後ろに隠した。





「お、おかえり、恵梨華」





企みを悟られないかひやひやしている葬儀屋。





そんな葬儀屋を不思議に思いながらも、恵梨華は葬儀屋の手を握った。





「ふふ、テイカー。ちょっとこっち来て?」





「へ・・?あ、ああ・・・」





恵梨華に手をひかれ、向かった先は寝室だった。





「ん・・・・?」





いまいち状況が理解出来ない。





葬儀屋は人差し指を唇に宛がいながら、首を傾げた。





恵梨華はそんな葬儀屋の背中をポンッと押した。





「ほら、そこの棺開けてみて?」





「あ、ああ・・・」





訳が分からないまま、葬儀屋は棺の蓋を開けた。





「ッ・・・・!」





棺の中には小さな小箱が入っていた。





「恵梨華・・・・コ、コレ・・・」





葬儀屋はその小箱を手に取ると、恵梨華に確かめるように見せた。





「だってテイカーってば、知らないフリするんだもん」





悪戯に笑う恵梨華。





葬儀屋は思わず恵梨華を抱きしめていた。





「っ・・・・・恵梨華・・!」





「わわっ・・・・く、苦しいよ・・」





感情的に抱きしめていたため、力が入っていたのだろう。





「あ、ああ・・・・すまなかったねぇ・・」





「でも・・・今日のアンダーテイカーの反応、すっごく面白かったよ」





「うぅ・・・・あんまり小生をからかわないでおくれ・・?」





恵梨華を信じられなかった自分が恥ずかしい。





先程まで恵梨華の周りに抱いていた殺意を悟られないように。





葬儀屋はそっと恵梨華に口付けをした。





「ありがとう、恵梨華。そして・・・・・愛しているよ」



-END-
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