短編夢小説V

□真夜中の神社
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「・・・・・・・・」





恵梨華はその質問に答えないまま、妖怪をどんどん追い詰めていく。





「ね、ねェ・・・君・・!」





とうとう妖怪は階段の所まで追い詰められていた。





降りる訳にもいかず焦る妖怪。





「き、聞いているのかい!?」





「あ・・・・・うん」





妖怪が声を荒げると、恵梨華は漸く反応した。





「いやぁ・・・・何か追い詰めたくなっちゃって」





ニッと恵梨華の口角が上がる。





嘲笑がその笑みに、妖怪の頬は紅に染まっていった。





「と・・・・ところで、君は一体何をそんなにお願いしていたんだい?」





照れ隠しのように話題を変える妖怪。





「ん・・・言ったら願い事が叶わなくなっちゃうかもしれないし」





「ヒッヒッヒッ、言っただろう?小生は九尾一族の末裔なのさ。だから・・」





妖怪は余裕を取り戻したのか、スタスタと恵梨華に近づいていった。





「君が願いを頼んだ”神”に近い存在かもしれないよ」





低い色香のある声。





その声に一瞬、恵梨華の心臓は高鳴った。





「に、人間を驚かす妖怪のくせに・・・」





ときめいてしまった事を隠すかのように。





恵梨華は視線をそらしながらボソリと呟いた。





その様子を見ていた妖怪は、形勢逆転とばかりにニヤリと口元を歪めた。





「ほらほら〜、早く言わないとその願い・・・叶えてあげないよォ〜?ヒッヒッ」





「うっ・・・・」





恵梨華は拳を握り締め、そっと妖怪に耳打ちをした。





「・・・・・・・・」





恵梨華の願いを聞いた妖怪は、黙り込んでしまう。





「ね、ねぇ・・・叶えてくれるんでしょ?」





動揺を隠せない恵梨華は、早く答えが聞きたかった。





しかし、次の瞬間。





「ぎゃーっはっはっはははっはっは!」





静かな神社に木霊したのは妖怪の笑い声だけだった―。



-END-
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