短編夢小説V

□犯人は銀の死神
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恵梨華は手を顎に当て、必死に考えをめぐらせた。





「犯人は死神を恨んでいる人物かもしれないねェ〜?」





「確かに・・・恨んでなかったらこんなに酷い殺し方しないもんね・・・」





無残な姿のグレルが、今も脳内に焼きついている。





恵梨華は目を伏せながらも、そんな惨い事をした犯人への復讐を誓っていた。





「他に・・・犯人にたどり着く情報はないの?」





「ん〜・・・あとは、顔見知りの可能性もあるかな」





―少しずつ、ヒントを与えていく。





 それはまるで、ゲームを楽しんでいるかのように。―





「死神を恨んでて顔見知り・・・」





徐々に絞られていく犯人像。





葬儀屋は、ボソボソ呟きながら考える恵梨華の耳元にそっと唇を寄せた。





そして、低く甘い声で囁く。





「いるだろう?一人・・・全てに当てはまる人物が・・」





「まさか・・・・」





恵梨華の頭の中に、ある人物が浮かび上がる。





”セバスチャン・ミカエリス”





高い身体能力、死神に対する恨み、ファントム社製の銀食器。





彼なら全てが当てはまっていた。





「あの・・・・悪魔・・ッ!」





恵梨華は嫌悪感むき出しでギリリと歯を軋ませた。





その瞳が、復讐の色へと染まっていく。





そしてグレルの近くに置いてあったメスを手に取る。





「アンダーテイカーも・・・手伝ってくれるよね?」





真っ直ぐな瞳で葬儀屋を見つめる恵梨華。





「ああ、勿論だよ」





ふわっとコートのボタンを外すと、葬儀屋は大鎌のデスサイズを取り出した。





「あの悪魔・・・いい奴だと・・思ってたのに・・・!」





キュッとメスを握り締める恵梨華。





「あの笑顔の下に隠された裏の顔・・・考えるだけで忌々しい・・」





「・・・どんなに見繕っても、所詮は害獣風情ってコトさ」





そう言い放つ葬儀屋の声は、どこまでも冷たいものだった。





シーンと静まり返る室内。





恵梨華は静かに深呼吸をすると、覚悟を決めたように扉の方へと歩いていく。





「行こう、アンダーテイカー」





恵梨華が葬儀屋に背を向けた途端、葬儀屋はニタリと口元を歪ませた。





「(これで君は・・・小生のモノだ)」





恵梨華を手に入れる為なら手段を厭わない。





恵梨華以外が何人死のうが構わない。





偽物の犯人を仕立て上げ、自分は恵梨華の味方をする。





これこそ、真犯人が考えた完璧なシナリオ。





恵梨華のすぐ後ろで怪しく笑う真犯人。





その真実に、その銀の死神に、恵梨華が気付く事はなかった―。



-END-
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