短編夢小説V
□小生の名前を思い出して
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「そうだよ。・・・・さあ、小生の名前を・・・」
帽子屋と名乗る男は、恵梨華の手をとったまま、静かに跪いた。
「小生の本当の名前を・・・・呼んでごらん?」
恵梨華はゴクリと息を呑みながら、小さな声でその名前を呼ぶ。
「アンダー・・・テイカー・・・?」
次の瞬間、見えていたものが何も無くなり、二人は暗闇の中にいた。
「えっ・・・・・な、何これ・・・?」
「ぐふっ・・・怖がるコトはない・・・あの場所は、君の記憶を蘇らせる為だけのモノだったのさ」
宙に浮いているような、不思議な感覚だった。
「ア、アンダーテイカー・・・私たち、この後どうなるの・・・?」
「言っただろう?君は夢の中を彷徨っている・・・と」
ふわりと葬儀屋に抱きしめられる恵梨華。
「また新しい夢で会おうね。・・・・でもその時は・・・」
葬儀屋の唇が、恵梨華の耳元へ寄せられる。
「小生の名前を・・・忘れないでね」
-END-