長編夢小説

□とある死神の初恋
1ページ/12ページ

「あっ・・・!」





魂の回収作業中、シネマティックレコードに襲われる恵梨華。





シネマティックレコードが刺さった左肩からは恵梨華の真っ赤な血が滲んでいた。





「ちょっと恵梨華!大丈夫!?」





グレルが慌てて恵梨華に突き刺さるレコードをデスサイズで狩った。





「・・・全く、これくらいの魂の回収も出来ないとは」





カチャリと眼鏡を直すウィリアム。





「憎まれ口叩く割には恵梨華が心配でここまで来たんでしょ〜?」





「なっ・・・!グ、グレル・サトクリフ、減給されたいのですか?」





頬を赤らめ動揺するウィリアム。





「と、とにかく、ここは私達に任せて貴方は傷の手当てをしてください」





ウィリアムが心配そうに恵梨華を見ながら言った。





恵梨華は頷くと、フラフラとした足取りでその場を後にした。





「(また・・・二人に助けられちゃったなぁ・・)」





すぐに死神界に帰る気になれない恵梨華。





大きな木のふちに座り、葉の間から零れる太陽の光を見ていた。





「(今日も始末書書かなきゃだなぁ・・私ってやっぱ才能ないのかなぁ・・・)」





落ち込んだ様子の恵梨華。





死神派遣協会のテストの時も、ほぼグレルとウィリアムに助けられて合格していた。





「(あの二人が居なかったら私・・・永遠に死神養成学校卒業出来なかったんじゃないかな・・・)」





じわりと涙が滲んでくる。





体育座りをし、思わず下を向いて俯いた。





自分の足をギュッと抱きしめる。





「・・・う・・・・ひっく・・・」





堪えきれなくなり恵梨華は泣き出してしまった。





人一倍努力家な恵梨華。





今までどんな死神よりも練習をし、勉強をしてきた。





それなのにドジで失敗ばかりで、助けられてばかりいる。





悔しくて、悲しくて、涙が止まらない。





「何をそんなに泣いてるんだい?」





泣いていると、突然声をかけられた。





驚いて声のする方を見上げた。





そこには綺麗な銀髪を風になびかせながら立っている男がいた。





「あっ・・・ひっく・・・なんでも・・・っ・・・ないです・・・」





「何でもない訳ないだろう?こんなに目を腫らして・・・」





男は恵梨華の前にしゃがむと、涙をそっと手で拭った。





「綺麗な黄緑色だねェ・・・おやぁ?君、怪我をしてるじゃないか」





恵梨華の肩から流れる血を見て男は心配そうな眼差しで恵梨華を見た。





「小生が手当てをしてあげるよ・・・立てるかい?」





「い、いえ・・・私は大丈夫ですので・・・」





人間になんて助けられるわけにはいかない。





恵梨華は慌てて男から離れた。





そのせいで、肩に痛みが走った。





「いっ・・・!」





慌てて肩を抑える恵梨華。





「いくら死神でも、ちゃんと手当てをしないといけないよぉ?」





「なっ・・・!」





自分の正体がバレている事に驚き、目を見開く恵梨華。





「ヒッヒッヒ・・・小生はアンダーテイカー、死神さ」





アンダーテイカーはゆっくりと恵梨華に近づき、目を覆っている前髪をそっと持ち上げた。





「あっ・・・」





綺麗な黄緑色の瞳が見える。





同じ死神とは思えないほど、アンダーテイカーの顔は美しかった。





恵梨華は一瞬で恋に落ちた。





「安心したかい?それじゃあ傷の手当てをするから小生の店においで」





頬を赤らめながら頷く事しか出来なかった。





そのままアンダーテイカーに支えられ、アンダーテイカーの店に着いた。





「とりあえずそこに座っていておくれ?今道具を持ってくるからねェ〜」





そういうとアンダーテイカーは奥の部屋へと消えていった。





恵梨華は言われた通り、柩の上に座った。





「(本当に同じ死神なのかな・・・あんなカッコイイ人初めて見た・・・)」





アンダーテイカーの素顔が頭から離れない。





高まる鼓動。





どんどん体温が上昇していくのが分かる。





恵梨華は赤く染まった頬に手を当てた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ