長編夢小説

□数百年後の黒執事
1ページ/15ページ

黒執事の世界にタイムスリップしてしまった恵梨華。





ここは漫画でやっていた頃から数百年経過した黒執事の世界。





つまり、シエルを始め、漫画で登場していた”人間”はもうこの世にいなかった。





頼れるのは愛しい彼しかいない。





そう、恵梨華の想い人であるアンダーテイカーだった。





ギィィィ・・・





恵梨華は勇気を出してアンダーテイカーの店の扉を開いた。





「いらっしゃ〜い。ようこそ、恵梨華」





「っ・・・!?」





恵梨華はアンダーテイカーが自分の名前を知ってる事に驚いた。





「な、何で私の名前を知ってるの・・・?!」





「ヒッヒッヒ・・・教えて欲しいかい?」





扉の前で立ち尽くしてる恵梨華を手招きするアンダーテイカー。





恵梨華は招かれるがまま、アンダーテイカーの隣の柩に腰掛けた。





「今お茶を淹れてあげるからねェ〜?」





「あ・・・じゃ、じゃあクッキーも!」





アンダーテイカーはニヤリと不気味な笑みを浮かべると、奥の部屋へと消えていった。





しばらくすると骨壷とビーカーを持って戻ってきたアンダーテイカー。





ゆっくりとカウンターに座ると、机に両肘をついた。





「いいかい?よくお聞き?」





「うん・・・」





「君をここに呼び寄せたのは・・・何を隠そう、小生なのさ」





「えっ・・・?」





恵梨華は食べようとしていたクッキーを持ったまま固まってしまった。





「小生は恵梨華に恋をしてしまってねェ〜?・・・傍に居て欲しくなったのさ」





ぽかーんとした間抜けな表情でアンダーテイカーを見ていた。





「でも恵梨華が小生の下に来てくれてよかったよ〜。もし君が違う人を好きだったら・・・」





アンダーテイカーは恵梨華の肩に腕をまわした。





そして恵梨華の顔に自分の顔を近づける。





その鋭い爪は恵梨華の首元に当てられていた。





「君を殺してでも小生のモノにするところだったよ・・・」





耳元で、低く、囁くような声だった。





アンダーテイカーの瞳が黄緑色の燐光を放つ。





まるで狩りをする獣のような瞳が前髪に隠れている。





ドクン・・・





恵梨華の心臓が恐怖で強く脈打った。





「(や、やっぱり本物は迫力が違うね・・・!)」





「でも恵梨華は小生が好きなんだろう?」





先程の殺気は無くなり、いつものニタニタとしたアンダーテイカーに戻っていた。





恵梨華の頬はほんのりと赤く染まった。





「う、うん・・・!」





「ヒッヒッヒ・・・ならここにいるといい。君の知ってる”人間”はもう居ないけどねェ・・・」





「・・・じゃあセバスチャンとかは居るんだ?」





「ああ・・・彼なら新しい獲物でも探してるんじゃないかなあ?」





「ふーん・・・」





恵梨華はあまり興味が無さそうに反応した。





愛しいアンダーテイカーさえ居てくれればそれでいいと思っていたからだ。





「ヒッヒ・・これからは楽しい毎日が過ごせそうだねェ〜」





「・・・やっぱり皆が居ないとつまらない?」





「あれから小生は坦々とした日々を過ごしたからねェ・・・」





アンダーテイカーは遠い目をしていた。





「でも・・・苦労して恵梨華を召喚する方法を調べてよかったよ」





「い、一体どんな方法で私を呼んだの?」





「ヒッヒッヒ・・・それは内緒さ」





アンダーテイカーは自分の唇に人差し指を当てながら言った。





「もし恵梨華が帰りたいだなんて言い出したら困るからねェ〜?」





「わっ、私はアンダーテイカー一筋だよ!」





恵梨華は言った後にハッと我に返った。





みるみるうちに恵梨華の顔が真っ赤に染まっていく。





「可愛いよォ〜、恵梨華」





頬っぺたをツンツンと爪で突付かれる。





恵梨華は恥ずかしさのあまり、俯いて目を瞑ってしまった。





「・・・おっと、忘れるところだったねェ・・・恵梨華、どこか痛むところは無いかい?」





「え・・・?特に大丈夫だと思うけど・・」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ