長編夢小説

□現役時代のアンダーテイカー
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「ヒッヒッヒッ・・・それじゃあ、小生は奥の部屋でお客さんの相手をしてくるからねェ?」





「はーい、いい子に待ってまーす」





恵梨華はカウンターの椅子に座りながら、やる気無さそうに答えた。





「勝手に外に出掛けちゃダメだよォ〜?」





「はーい」





「誰か来ても、知らない人にはついていっちゃダメだよ?」





「はーい」





「寂しくなったらいつでもおいで?」





「・・・はーい」





「それから・・・」





アンダーテイカーのあまりにも過保護な態度に恵梨華は眉を寄せた。





「んもう!早く行ってきなよ!」





声を荒げる恵梨華をアンダーテイカーは優しく抱きしめた。





「ああ、恵梨華・・・本当は小生が寂しいんだよ・・・」





頬をすりすりと恵梨華にこすり付ける。





まるで甘えた子犬のようだった。





そんな可愛いアンダーテイカーに、恵梨華の瞳も優しくなった。





「よしよし・・・さっきはきつい言い方してごめんね・・?」





なだめるように頭を撫でる恵梨華。





銀色のさらさらとした髪が恵梨華の指をくすぐった。





その感覚が、とても心地よい。





「・・・とりあえず掃除が終わったら一旦覗きに行ってあげるからさ」





「本当かい・・?」





恵梨華は撫でている手でアンダーテイカーの前髪をすくった。





綺麗な瞳が真っ直ぐとこちらを見つめている。





ドキッ・・





目と目があった瞬間、恵梨華の心臓は高鳴った。





吸い込まれそうなほど美しい黄緑色の瞳。





キラキラと輝くその瞳は、ダイヤモンドよりも美しく気高く輝いていた。





「ほ、本当だよ。だから、この前みたいに血塗れで出てこないでね・・・?」





アンダーテイカーに見つめられ、少し動揺した恵梨華は、声が少し裏返っていた。





「ヒッヒッヒ・・・二人で血塗れになるのも小生は好きだけどねェ〜?」





アンダーテイカーはニッと口角を上げて笑った。





「ちょ・・・!私にそっちの趣味はないんだからね!」





恵梨華は拗ねたように口を尖らせた。





「・・・さて、恵梨華にたっぷり愛情を貰ったし、小生は待たせているお客さんの相手をしてくるよぉ」





「今回も惨殺死体なんでしょ〜?可哀相だから早く綺麗にしてあげてね」





アンダーテイカーは床に落ちた帽子を拾い上げると頭にぽふっと乗せた。





そしてそのまま奥の部屋へと消えていった。





恵梨華はアンダーテイカーが行った事を確認すると、掃除に取り掛かった。





「まずは店内から掃除しないとね」





やる気になったのか、テキパキと掃除する恵梨華。





あっという間に店内の掃除を終え、次は部屋を掃除する事にした。





「うわっ・・・!何これ・・・」





散らかった部屋を見て恵梨華は驚いていた。





「昨日綺麗にしたばっかりなのに・・・どうやったら一日でこうなるんだろう・・・」





散らかし癖のある恋人に少しため息をつく恵梨華。





しかし急いで掃除を終わらせて覗きに行ってあげないと、また出てきてしまう可能性がある。





血塗れで店内に来られては、また掃除のやり直しである。





それだけは避けたい恵梨華は、急いで作業に取り掛かった。





散らかった本を本棚に戻していく恵梨華。





「ん・・・?何だろう?これ・・・」





恵梨華は一冊の本を見つめていた。





その本はどうやらアルバムのようだった。





「(こ、これってアンダーテイカーのアルバム・・・!?)」





高鳴る鼓動。





好奇心旺盛な恵梨華はそのアルバムを見たいという衝動に駆られた。





「す、少しくらいなら・・・いいよね・・・?」





恵梨華はそのアルバムを開こうとした。





しかし勝手に見ようとしている罪悪感が恵梨華に重く圧し掛かる。





「い、いや・・・やっぱりダメだよね・・・!」





唇を噛み締め、名残惜しそうにアルバムを見つめる恵梨華。





そして本棚に戻そうと手を伸ばした。





しかし、そこで動きが止まってしまう。
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