長編夢小説

□真の首謀者は愛しい君
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「本当に・・・こんな事を続けてお母様に逢えるのかしら・・?」





不意に恵梨華は不安げに表情を曇らせた。





「ヒヒッ、小生が君に嘘をついたコトがあるか〜い?」





まるで暗い恵梨華の気持ちを吹き飛ばすかのように葬儀屋は明るい笑顔を向けた。





そんな笑顔に、思わず恵梨華からも笑みが零れ落ちた。





「フフッ・・・・そうね」





見つめ合う二人。





それは長年連れ添った夫婦のように。





視線だけでお互いの気持ちが通じ合う。





「行くわよ、アンダーテイカー」





「ぐふっ・・・恵梨華となら、地獄の果てのその先まで・・・」





まるで紳士のように深々とお辞儀をする葬儀屋。





そしてスッと恵梨華の小さな手を取ると、その手の甲に口付けをした。





「愛する君のためなら・・・小生は何だってしてみせるよ」





真っ直ぐ恵梨華を見つめる葬儀屋。





その美しい瞳には、嘘偽りが無かった。





「早く・・・成功するといいわね」





恵梨華は目を細めると葬儀屋から視線を外した。





「焦る必要はないよ。今はこれからの船旅を楽しむコトを考えようか?」





葬儀屋の言葉に、恵梨華は深呼吸をして自分を落ち着かせた。





「そうね、旅行なんて久しぶりだもの」





「ああ、まるで新婚旅行のようだねェ〜?ヒッヒッ」





「クスッ・・・何回行く気かしら?」





いつまで経っても変わらない葬儀屋が可笑しくて。





恵梨華は少し嬉しそうに葬儀屋をからかった。





そんな恵梨華の心情を察したのか、葬儀屋も自然と口元が緩んでいった。





「ヒッヒッヒ〜、恵梨華とならな〜〜んどでも新婚旅行しちゃうよォ〜?」





「・・・・バカ」





ボソリと呟かれたその言葉は照れ隠しの証。





ほんのりと桃色に染まった頬を隠すように、恵梨華はフイッとそっぽを向いた。





そんな恵梨華を愛おしい目で見つめながら、葬儀屋はニッと口角を上げた。





「さあ、行こうか?」





慣れた手つきで恵梨華を肩に乗せると、葬儀屋はそのまま船へと乗り込んでいった。
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