長編夢小説
□劣化と成長、僕が歩んできた道
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「はぁ・・・また仕事・・・かい?」
葬儀屋はアバーラインが入ってくるなり大きなため息をついた。
「申し訳ありません・・・葬儀屋を営んでらっしゃるのは貴方だけですから・・」
アバーラインは申し訳なさそうに頭を下げる。
そんな様子を見ていた恵梨華が葬儀屋に声をかけた。
「そんな風に言ったらアバーラインさんが可哀相だよ?」
「はぁ〜〜・・・・仕方が無いから行ってくるよ・・」
葬儀屋はフラフラした足取りで立ち上がった。
「ああ、もしも寂しかったら・・・いつでも小生に会いにきておくれ?」
名残惜しそうに唇を重ねる葬儀屋。
カァッと恵梨華の頬が真っ赤に染まっていった。
「ちょ・・?!ア、アバーラインさんがいるから・・・!」
チラリとアバーラインに視線を送る恵梨華。
「じ、自分は何も見ておりませんので・・///」
そう言いながらも顔を赤くするアバーライン。
恵梨華は呆れたように小さなため息をついた。
「ぐふ・・別に小生は気にしないけどなァ〜?」
先程までの寂しい気持ちはどこへやら。
アバーラインに見せ付けた事により、葬儀屋は上機嫌だった。
「アンダーテイカーが気にしなくても・・・私が気にするの!」
「ぐふふ・・・照れちゃって〜、可愛いねェ?」
恵梨華の赤くなった頬をツンツン、と指で突く葬儀屋。
恥ずかしさに耐えられなくなった恵梨華はフイッと顔を背けた。
「は、早く行ってよ・・!」
そんな恵梨華を、葬儀屋はふわりと抱きしめた。
「やっぱり今日は止めておこうかな。小生はこうして恵梨華とず〜っと・・・」
言い終わる前に、恵梨華がその言葉を遮った。
「もう!嫌いになっちゃうよ!?」
葬儀屋の身体がビクッと反応した。
「さ、さて・・・それじゃあ、小生は仕事に行くとするかねぇ〜」
口では行くと言いながらも、恵梨華の頭を撫でる葬儀屋。
「もしも小生に会いにきてくれるなら、その時は執事くんに付いてきてもらうんだよォ〜?」
「それがいいですね。最近は美女を狙った誘拐事件が多発しておりますので・・・」
不安そうな表情を浮かべる二人。
「(・・・この人たちはどこまで心配性なの・・・)」
恵梨華は心の中で苦笑いするしかなかった。
「分かった分かった。・・・ほら、お客さん待たせたら可哀相でしょ?」
半ば無理矢理二人を追い出し、恵梨華は店のドアを閉めた。
「はぁ・・・心配してくれるのは嬉しいんだけどねぇ」
疲れてしまったのか、恵梨華はそのままドアにもたれかかるように座り込んだ。
すると、ドア越しに二人の会話が聞こえてくる。
「警部補くん、君も恵梨華が好きみたいだけど・・・ヒッヒッ、あげないよぉ〜?」
「じ、自分はそんな・・!」
「コレは忠告だ。小生の恵梨華に手を出したら・・・すぐに冥界へ送ってあげるから・・・ね?」
葬儀屋の静かな殺気に、アバーラインはビクリと方を震わせた。
「自分は・・・恵梨華さんが幸せならそれで・・・いいんです・・」
まるで自分に言い聞かせるように。
ボソリと呟かれたその言葉に、葬儀屋は満足そうに笑みを浮かべた。
そんな会話を聞いていた恵梨華は、両手を自分の頬に当てていた。
「(うっ・・・何か恥ずかしい・・・!)」
聞いている事が恥ずかしくなり、恵梨華は慌ててキッチンの方へと向かった。
気を紛らわす為に、クッキーを作ろうと思った恵梨華。
「ん・・・・」
恵梨華の見つめる先は、空っぽになった袋だった。
「うーん、買いに行きたいけど・・・一人で行ったら怒られちゃうからなぁ・・」
暫く考えた結果、恵梨華はファントムハイヴ邸に電話をかけた。
「もしもしセバスチャン?恵梨華だけど、実は・・・」
いつもならセバスチャンが出るのだが、今日は聞きなれない声が聞こえてきた。