長編夢小説

□犯人は銀の死神U
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「はぁ・・・・はぁ・・・」





息を切らす愛しい恵梨華。





その身にべっとりと悪魔の返り血を浴びて。





そんな姿すらも妖艶で美しいと思ってしまう。





それくらい、小生は君に溺れている。





「執事クンも往生際が悪いねェ〜?・・・さすがは害獣風情だ」





目を細めて嘲笑えば、執事くんがこちらを睨みつける。





「私は・・・・・ッ・・・・何も知らないと・・・ハァ・・・・言ってるじゃないですか・・・ハァ・・・」





煩い口だ。





そんなにズタズタになりながらも、まだそんなコトが言えるんだね。





余計なコトを喋る前に、早く始末してしまわないと。





「おやおや、執事クン・・・命が惜しくなったのか〜い?ヒッヒ・・」





恵梨華が執事くんの言葉に惑わされる前に釘を打つ。





小生の言葉に、恵梨華は小生の思惑通りの反応をする。





「命乞いなんて・・・みっともないね」





そう、悪魔はなんて醜悪なんだろう。





その卑しい手と唇で無垢なる魂を貪る穢れた存在。





小生の目的には、まさにおあつらえ向きの存在だ。





―ほら、もっと甚振っておやりよ?





恵梨華は小さなメスをキュッと握り締め、執事くん目掛けて走り出した。





人間の恵梨華の攻撃なんて、悪魔がかわすのは容易い。





だからこそ、小生がココにいるんだ。





小生はすかさず、執事くんを後ろから羽交い絞めにした。





「・・・ッぐ・・・・・はぁ・・・」





飛び散る鮮血。





血に染まっていく恵梨華の小さな手。





次の瞬間、執事くんが最後の抵抗を見せる。





小生の腕を振り払い、その手を恵梨華に伸ばす。





―汚い手で小生の恵梨華に触るな。





「がぁァァッ・・・!」





執事くんの悲鳴と共に、大量の血が吹き出す。





恵梨華に触れようとしたその腕ごと、小生が斬りおとしてあげたからね。





痛みに耐えられなくなったのか、執事くんはその場に崩れ落ちた。





「人間の恵梨華から狙おうとするなんて・・・やっぱり悪魔のやり方は汚いねェ〜?」





小生が恵梨華に視線を送れば、恵梨華の目つきが変わる。





「ほんと・・・・最低ね・・・」





まるで汚いモノでも見るような目で執事くんを見下す恵梨華。





ああ、その瞳を見ているだけでゾクゾクしてしまうよ。





「・・・ッ・・・・ぅぐ・・・・・・・・・・・・さ・・・ん」





恵梨華を見つめ、何かを訴えようと必死になっている執事くん。





―遊びはコレで終わりだよ。





何かを伝えるその前に、小生が息の根を止めてあげるよ。





「恵梨華、止めは小生がしてあげるよ。・・・わざわざキミの手を汚すコトもないさ」





殆ど動かなくなった執事くん目掛けて、デスサイズを振り上げる。





「じゃあね、執事クン」





勢いよく心臓を貫くと、執事くんから大量のシネマティックレコードが溢れ出す。





勿論そこに、赤い死神クンを殺した映像など映っているはずがない。





そして、何事もなかったかのように、執事くんの死体は消えていった。





途端、地面に崩れ落ちる恵梨華。





「・・・・大丈夫かい?」





「う、うん・・・・ちょっと力が抜けちゃって・・・」





復讐を果たし、安堵の笑みを零す恵梨華。





―ああ、今すぐ抱きしめてしまいたい。





でも、まだ早いからね。





「ハァ〜・・・・しょうがないねェ・・・」





小生はわざと溜め息を零した後、恵梨華を抱きかかえた。





「あ、ありがと・・・」





恵梨華は小さく呟くと、壊れたような笑顔を見せてくれた。





―今この瞬間、永遠に時間が止まってしまえばいいのに。





恵梨華に触れただけで、熱くなる身体。





もっと触れたいという衝動。





でも、まだキミに悟られるワケにはいかない。





小生は極力そっけないフリをして、店まで恵梨華を抱えて戻った。
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