超短編夢小説T

□葬儀屋さんの悪戯
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「なんだか眠くなってきちゃった・・・」





「今日は朝早くから起きてたからねェ・・?」





恵梨華は眠い目を擦りながら欠伸をしていた。





「まだ20時だから・・・少し寝るかい?」





「うー・・・じゃぁ23時に起こしてね・・・」





言うと同時に倒れるように柩に入り込む恵梨華。





アンダーテイカーは恵梨華に優しく毛布をかぶせた。





既にスヤスヤと気持ち良さそうに寝息を立てる恵梨華。





アンダーテイカーは恵梨華の前髪を上げ、額にそっと口付けをした。





「おやすみ、小生のお姫様」





優しく囁くように言うと、柩の蓋をそっと閉めた。
















目が覚めると真っ暗だった。





「(今何時だろう?アンダーテイカーに起こされてないからまだ23時前なのかな?)」





恵梨華はゆっくりと柩の蓋を開けた。





月明かりが優しく差し込む。





アンダーテイカーはカウンターの椅子に座って眠っていた。





「(あ・・・毛布・・・。アンダーテイカーがかけてくれたんだ・・・優し・・・!?)」





恵梨華は時計を見て驚いた。





時刻は1時20分。





恵梨華はバタバタと慌ててアンダーテイカーの元へ向かった。





そして眠っているアンダーテイカーの胸倉を掴んだ。





「ちょっと!何で起こしてくれなかったの?!」





そのままゆさゆさと揺すった。





「ん〜?ああ・・・恵梨華、おはよう」





アンダーテイカーはそんな状況に驚きもせず、いつもの怪しい笑みを浮かべていた。





「おはよう・・・じゃないよ!今何時だと思ってるの!?」





「・・・おやおや、もうこんな時間だったんだねェ〜」





「うぅ・・・折角の年越しが・・・」





恵梨華はアンダーテイカーの服を離した。





そしてがくりと落ち込んだように床に手をついて嘆いた。





そんな様子を見ていたアンダーテイカー。





堪えていた何かがプツリと切れたように突然笑い出した。





「ぶひゃはははっ!」





恵梨華はその音量にビクリと肩を震わせ、驚いたようにアンダーテイカーを見た。





「ど、どうしたの・・・?」





恐る恐る問いかける。





「イーッヒッヒ・・!」





アンダーテイカーはまだ笑いが治まらない様子。





恵梨華は呆れてその笑いが治まるのを暫く待っていた。





そして治まったようで、床に座っていた恵梨華に近づいてきた。





「恵梨華・・・外に出てごらん?」





「・・・?」





恵梨華は不思議に思いつつも外に出た。





冷たい空気。





夜のロンドンは月明かりに照らされとても美しかった。





ふと、時計塔を見た。





針は23時25分を刺していた。





「え・・・?」





恵梨華は状況が読めず、固まってしまった。





「ヒッヒッヒ・・・まだ今年だよぉ?何をそんなに焦ってたんだい?」





後ろに居たアンダーテイカーがニヤニヤしている。





「だ、騙したなー!!!」





恵梨華は怒ったように、でも少し嬉しそうに振り返った。





振り返った瞬間、目の前が銀色に染まった。





あまりにも一瞬の出来事に、恵梨華は目を見開いたままだった。





唇と唇が重なっていた。





驚きのあまり、恵梨華が動けずにいると、アンダーテイカーはゆっくりと唇を離した。





「一年に一度しかない年越しを・・・恵梨華と過ごさない訳ないだろう?」





アンダーテイカーは優しく微笑んでいた。





「今年も素敵な年越しをしようね♪」





恵梨華も満面の笑みを浮かべながらアンダーテイカーを見つめていた。



-END-

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