短編夢小説U

□伝説と新人
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死神派遣協会、年に一度の大イベント。





入社したばかりの新人死神とベテラン死神がペアを組み、新人死神の能力向上を図る。





能力は数値化され、元の値からどれだけ高く出来るかを競う。





優勝ペアには一週間の休みとペア旅行券が貰える。





日ごろ残業続きの死神にとっては有難いイベントだった。





勿論、旅行券が当たるため、ペアは男女に限定される。





ベテラン死神は、好きな新人死神に告白し、新人が受け入れればペアが成立する。





この新人死神選びも重要なのだ。





元の数値が低い死神を選ぶか、高い死神を選ぶかによって勝敗を大きく左右する。





そして今、注目の人物の告白タイムが始まっている。





そう、あの伝説の死神と言われた男の告白タイムだ。





「さあ・・・今年はどの子にしようかねェ〜?・・・イーッヒッヒッ」





不気味な笑みと笑い声。





これが伝説の死神でなければ、ただの変人にしか見えない。





周りの死神達は、息を呑んでその様子を見守っていた。





人差し指を口元に当て、じっくりと数値と死神を確認する。





するとある新人の前でその動きがピタリと止まった。





流れるように美しい金色の長い髪が燦然と輝いている。





整った顔、桃色の小さな唇、そしてほんのりと赤く染まった頬。





瞳は他の死神とは違い、緑色の強い黄緑色だった。





「おやぁ〜?君みたいな可愛い子がどうして残っているのかなぁ〜〜?」





アンダーテイカーは首を傾げながら、ふと頭の上にある数値を見た。





そう、この死神は極端に数値が低いのだ。





どうやって入社試験に合格したのだろうと思われるぐらいの低さだった。





「ぐふっ、実に面白い・・・決めたよ、小生はこの子にしよう」





その言葉に、周りがざわめきだす。





アンダーテイカーはそんな周りを無視し、一歩一歩その死神に近づいていく。





「君・・・名前は?」





「恵梨華・・・恵梨華です・・」





どうしていいのか分からない恵梨華は戸惑いの色を隠せなかった。





するとアンダーテイカーは恵梨華の前に跪き、真っ白な薔薇を取り出した。





「恵梨華・・・いい名前だね。小生とペアを組んでくれるかな?」





その真っ白な薔薇の花びらにそっと口付け、恵梨華に差し出した。





まるでそれは愛の告白のよう。





恵梨華は耳まで真っ赤にして動けない様子だった。





「・・・小生とじゃ不満かい?」





中々受け取らない恵梨華をアンダーテイカーは鋭い瞳で見上げた。





恵梨華は慌ててブンブンと首を振り、差し出された白い薔薇を受け取った。





アンダーテイカーはそんな恵梨華に、満足そうな笑みを浮かべていた。





途端に沸き起こる歓声。





こうして年に一度の大イベントが無事に始まった。





ペアになった死神たちは各自好きな場所、好きな方法で練習をする。





制限時間は本日の19時まで。





短い時間の中で、いかに新人を伸ばせるかが勝負の鍵を握っていた。





「さて・・・小生たちもそろそろ行こうか」





「あ・・・はい・・・」





「・・気に入らないねェ・・・まずはその敬語をやめてもらおうか?」





「えっ・・・で、でも・・・!」





「ヒッヒッヒ・・・小生の言うコトが聞けないのかなぁ〜?」





さすがは伝説の死神、威圧感が違った。





恵梨華はビクリと肩を震わせ静かに息を呑んだ。





「が、頑張る・・よ・・・」





少し怯えながら言う恵梨華にアンダーテイカーは苦笑いをしていた。





そして安心させるために、肩をそっと抱き寄せる。





「怖がらせてしまったね・・・でも小生はただ君と仲良くしたいだけだよ?」





優しい声色で囁くように言うと、恵梨華の身体の震えが治まった。





「さ、時間が無いからね」





アンダーテイカーはおもむろに恵梨華をお姫様抱っこした。





恵梨華は突然の出来事に、思わずジタバタした。





「えっ!?」





「暴れるんじゃあないよ。しっかり小生に捕まっているんだよ?」





恵梨華が自分の服を掴んだのを確認すると、アンダーテイカーの口角がニヤリと上がった。
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