短編夢小説U

□過保護すぎる二人
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もしもあの時両手に花だったら―。












『過保護すぎる二人』














トントントン・・・





キッチンからリズミカルな音が聞こえる。





恵梨華は久しぶりに料理をしていた。





いつもは恋人たちに邪魔をされ、作る事が出来ない。





しかし今日はそんな二人が仕事で出かけている。





「よーし!久しぶりに美味しいご馳走を作るぞー!」





やる気満々で腕まくりをする恵梨華。





その時だった。





「「ただいま〜」」





聞き覚えのある声。





恵梨華はその声にビクリと反応した。





「(か、隠れなきゃ・・・!)」





パニック状態に陥った恵梨華は、慌てて隠れる場所を探した。





しかしキッチンに恵梨華が隠れられるような場所は見つからない。





その間にも二人の気配はどんどんキッチンへと近づいてくる。





「(と、とにかく切った材料だけでも隠さないと・・・!)」





材料を全部ボウルに入れ、戸棚に隠そうとしたその時。





「っ・・・!恵梨華!?何をしてるんだい?!」
「な〜〜にをしてるのかなぁ〜〜〜?ヒッヒッヒ・・」





キッチンの入り口に二つの銀色。





葬儀屋は片腕をドアにつき、少し前かがみで鋭い瞳を恵梨華の方に向けている。





対照的にアンダーテイカーは目を見開いて驚いていた。





慌てた様子で駆け寄るアンダーテイカー。





ゆっくりとした足取りでじりじりと恵梨華に近づく葬儀屋。





恵梨華は静かに息を呑んだ。





アンダーテイカーは心配そうに恵梨華の両手を確認した。





「・・・怪我でもしたらどうするんだい・・・危ないだろう?」





「ヒッヒ・・・そーだよ、君に傷をつけていいのは小生だけだからねェ?」





葬儀屋は口角を上げてニタリと笑った。





「ま、待ってよ・・・!私だって料理くらい出来るよ!?」





これからも料理が出来なくなるのは困る恵梨華は必死に抵抗してみせる。





しかし二人にそんな言葉は通じなかった。





「包丁なんて危ないモノを握るのはお止めよ。料理なら小生がしてあげているだろう?」





「(私ちょっと前までデスサイズ握って魂回収してたんだけどなぁ・・・)」





恵梨華は心の中で苦笑いをしていた。





葬儀屋はそんな恵梨華の心情を読んだのか、力強く恵梨華の肩を掴んだ。





「ぐふっ・・・どうやら恵梨華は言葉で言っても分からないようだ」





前髪を持ち上げその鋭い瞳を露わにする。





妖しい燐光が恵梨華の視線を釘付けにした。





「いけない子だ・・・身体に教えてあげないとね・・ヒッヒッ」





そんな様子を口をヘの字にして見ていたアンダーテイカー。





不機嫌そうな声で葬儀屋に釘を刺した。





「乱暴はしないでおくれよ。小生の恵梨華はか弱いんだからね」





「イッヒッヒ・・・大丈夫、殺しはしないよ。小生にとっても大切な恵梨華だからねェ〜?」





アンダーテイカーはその言葉を聞いた途端、葬儀屋の腕から恵梨華を奪い取った。





「小生が守ってあげるよ・・・恵梨華」





耳元で甘く囁く。





色気のあるその声に、恵梨華は腰が砕けてしまいそうになる。





恵梨華の顔がポーッと赤く染まっていった。





「ヒッヒッ、恵梨華は幸せ者だねェ〜〜〜?」





頭を撫でながらニヤニヤする葬儀屋。





「ヒッヒッヒ・・・そうだねェ。こんなにも小生たちから愛されているんだからねぇ〜?」





恵梨華は恥ずかしそうに俯いた。





「逃がしはしないよ、恵梨華。君が拒絶しても小生はどこまでも追いかけるからね」





「小生の傍から離れていかないでおくれ・・・?」





ギロリと死神の瞳を輝かせる葬儀屋、動揺したようにその瞳の光が揺れるアンダーテイカー。





愛情表現はそれぞれ違うが、二人とも恵梨華を大切に思っていることは確かだった。





二人の愛を痛いほどに感じる。





「「恵梨華・・・」」





恵梨華の両頬に二人の唇が同時に触れた。
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