短編夢小説U
□それでも君が欲しいから
1ページ/2ページ
恵梨華とグレルはとあるテーマパークに遊びに来ていた。
「わー・・・すごく広いね・・・!」
「ンフッ☆迷子にならないように気をつけてネ」
「んもう、子供じゃないんだから迷子になんてならないよ!」
ぷぅっと頬を膨らませる恵梨華。
そんな恵梨華を見るグレルの顔は綻んだ。
「さっ♪早く行きまショ!」
ぐいぐいと恵梨華の腕を引っ張るグレル。
グレルに連れられて、恵梨華はパーク内の買い物コーナーに来ていた。
「わぁ!すごい!色んなモノが売ってるね!」
「あぁんっ、恵梨華見て!コレ可愛いワ〜☆」
まるで年頃の女の子のようにはしゃぐ二人。
商品を色々探していると、恵梨華は真っ赤に輝く綺麗な指輪を見つけた。
「綺麗・・・ねぇグレル、見て見て!コレすっごく綺麗だよね!」
勢いよく後ろを振り返る恵梨華。
しかしグレルの姿は見当たらなかった。
「え・・・?グレル・・・?」
急に不安になる恵梨華。
慌ててグレルの気配を探そうとするが、ヒトの気配が多すぎて全く分からない。
「ど、どうしよう・・・私・・・迷子になっちゃったのかな・・・?」
その場に立ち止まっている事に不安を感じた恵梨華はとぼとぼと当ても無く歩き出した。
ドンッ・・・!
前をちゃんと見ていなかった恵梨華は誰かにぶつかってしまった。
「あ・・・すみません」
慌てて頭を下げて謝る。
そしてゆっくりと顔をあげると、そこには外国人の二人組がいた。
その男たちの手には恵梨華の鞄に入っていたはずの財布が握られている。
「・・・え・・・・・?」
男たちは恵梨華の目の前で財布の中身を数えだした。
慌てて取り戻そうとする恵梨華。
「や、やだ・・・ッ!返して!!」
震える身体を必死に奮い立たせ、男たちに立ち向かう。
しかし恵梨華よりもはるかに大きい男二人には勝てるはずもなかった。
男たちは恵梨華をひょいっと持ち上げると、そのまま連れ去ろうとした。
「(やっ・・やだ・・・怖い・・・!だ、誰か助けて・・・!)」
もうだめだと思ったその時、一人の男が現れた。
「何をしているんです?貴方たちは・・・」
「ウィル!」
「その方は私の知り合い。今すぐ離して頂けませんか?」
ウィリアムの言葉に怒った男たちは、ウィリアムに襲い掛かった。
「フンッ、人間ごときが誇り高き死神に勝てるとでも?」
男たちの力を受け流すかのように襲ってきた男たちを軽々と投げ飛ばした。
「恵梨華さん・・・お怪我はありませんか?」
「あ、ありがとうウィル・・・!」
「それでは私は仕事がありますのでこの辺で・・・」
ウィリアムはカチャリと眼鏡を直すと、あっという間にその場からいなくなった。
「た、助かったぁ〜・・・」
ほっと肩をなでおろす恵梨華。
財布の中身を確認すると、鞄の中に仕舞った。
「さて・・・グレルを探さないとね」
ウィリアムに会って安心したのか、恵梨華は冷静を取り戻していた。
暫く歩いていると、ある異変に気が付いた。
「(何か嫌な視線を感じる・・・なんだろう・・・)」
恵梨華は眉を寄せながら、足早にその場を去ろうとした。
しかし、気付いた頃には大勢の男たちに囲まれていた。
その中には先程ウィリアムが倒してくれた二人組の男もいた。
そう、彼らは組織の人間だったのだ。
「(・・・そうか、最近噂の外国人の組織だね・・・)」
冷や汗をかきながら、その人間たちをどう撒こうか必死だった。
「(ウィルのところに行かなくちゃ・・・!)」
急いでウィリアムのところに行こうとした時、不意に腕を掴まれてしまった。
「っ・・・!ちょ・・・やだ・・・!離して!」
必死に抵抗するが、力強く腕を掴まれどうすることも出来ない。
ズルズルと引きずりながら、男たちは恵梨華をアジトへ連れ去ろうとしていた。