短編夢小説U

□その名前は聞きたくない
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「おはよ〜う、恵梨華」





キッチンで朝食を作ってる恵梨華のもとに、アンダーテイカーが来た。





まだ寝惚けているようで、少しフラフラしている。





狭い柩の中で寝ているせいか、その長い銀髪が無造作に跳ねている。





しかし美形はどんな髪型でも似合ってしまうもの。





恵梨華は恋する乙女のような瞳でアンダーテイカーを見つめていた。





「ん〜?恵梨華、どうかしたのかい?」





頭をポリポリかきながら言うアンダーテイカー。





そんな動作すらも恵梨華にはかっこよく映ってしまう。





耐え切れなくなった恵梨華は思わずアンダーテイカーに飛び掛った。





「おわっ・・・!」





勢いよく床に倒れこむ二人。





恵梨華がアンダーテイカーを押し倒した形になっていた。





「ヒッヒッヒ〜、朝からお盛んだねェ〜?」





「ち、違うよ!・・・瞳が見たくなったの」





ゆっくりと長い前髪をかきあげる。





美しい瞳がこちらを見つめている。





恵梨華はうっとりとした表情でその瞳を見ていた。





「ぐふっ・・・相変わらず君は小生の瞳が好きなんだねぇ?」





優しく細められる瞳。





恵梨華はその瞳から逃れられる術を知らない。





見えない鎖に囚われた恵梨華は呼吸をする事すらも忘れそうになる。





「本当に綺麗な瞳・・・セバスチャンの瞳も好きだけど、やっぱりアンダーテイカーが一番だよ」





”セバスチャン”という言葉にアンダーテイカーはピクリと眉を動かした。





そして恵梨華の後頭部を押さえ、荒々しく唇を奪った。





「ンッ・・・!」





突然の出来事に戸惑う恵梨華。





いつもの優しいキスではなく、強引で乱暴なキス。





恵梨華が苦しそうに眉を寄せると、ゆっくりと唇が解放された。





「はぁ・・・い、いきなり何するのよ・・!」





「恵梨華がいけないんだよ?他の男の名前なんて出すから・・・」





「わ、私はただ瞳の話をしただけだよ・・」





アンダーテイカーは恵梨華の両頬を両手で押さえた。





「君は小生だけ見ていればいいのさ」





「う、うん・・・///」





恥ずかしいのか、カァッと顔が赤くなっていく。





そんな恵梨華を見たアンダーテイカーは、満足そうな笑みを浮かべた。





「しかし・・・君の瞳フェチには困ったものだよ」





「そ、そうかなぁ・・・アンダーテイカーにはそういうもの、ないの?」





「小生かい?・・・そーだなァ〜・・・」





アンダーテイカーは暫く考えると、意味ありげに含み笑いをした。





「死体フェチ・・・かなぁ?イッヒッヒ・・」





その言葉に、恵梨華の背筋を嫌なものが走った。





「血の気が無くなり蝋のように真っ白な肌・・・」





恍惚な表情で語りだすアンダーテイカー。





恵梨華は思わずアンダーテイカーの上から退いた。





「姦しく騒ぎ立てるコトもなくなった口・・・」





鋭い瞳が恵梨華を捉えた。





恵梨華は冷や汗をかきながら、少しずつ後ずさりをした。





「抵抗すらしないで小生を受け入れる・・・」





逃げる恵梨華とじりじりと追い詰めるアンダーテイカー。





「聞きたくもない男の名前を呼ぶコトもなくなるね・・」





その空気に耐えられなくなった恵梨華は、恐る恐るその名前を呼んだ。





「アンダー・・・テイカー・・?」





震える身体、震える声。





アンダーテイカーはそんな恵梨華を氷のように冷たい瞳で見ていた。





「どうして逃げるんだい?ほら・・・こっちへおいで」





「ひっ・・!」





差し出された手にビクリと怯える恵梨華。





大好きなアンダーテイカーの手のはずなのに、それがどうしようもなく恐ろしくて堪らない。





「(こ、殺される・・!)」





死の恐怖が恵梨華を襲う。





怖くなり、恵梨華はもうアンダーテイカーを見る事が出来なかった。





「ねぇ、恵梨華・・?」





ふいに名前を呼ばれ、覚悟を決めて顔を上げた。
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