短編夢小説U

□君のための隠し事
1ページ/2ページ

「どうだい?そろそろ恵梨華を諦める気になったか〜い?ヒッヒッ」





ぽんぽんとデスサイズの柄の部分を自分の手に当てながらニヤニヤしている葬儀屋。





「ふふ・・・・私は一度狙った獲物は・・・諦めませんよ・・・」





ギラリと悪魔の瞳で葬儀屋を睨みつけるセバスチャン。





その額からは一筋の血が流れた。





「へぇ・・・まだそんな口が聞けるんだねェ〜?」





葬儀屋の鋭い瞳が冷たい光を放つ。





セバスチャンを見下すその目は、まるで虫けらでも見るような残酷な瞳だった。





「随分と・・・愉しそうですね・・・・まさか貴方にそんな趣味が御ありとは・・・クスッ」





呼吸を乱しながらも、挑発的に笑うセバスチャン。





「お黙り。ま、そんな無様な格好で何を言おうと無駄というモノだけどね」





身体中の至る所に生々しい傷。





真っ赤な鮮血は燕尾服にどす黒いシミを作っている。





両手両足は葬儀屋特製の鎖で壁に繋がれていた。





「ヒッヒッヒ・・・いつまで平静を装っていられるかなあ?」





葬儀屋は冷たく笑うと、死神の鎌をセバスチャンの右手に突き刺した。





「・・・くっ・・・・はぁ・・・・」





一瞬苦しそうに顔を歪めるセバスチャンだったが、すぐに余裕の笑みを浮かべた。





「クスッ・・・貴方に私は・・・殺せない・・・・。そう・・・ですよねぇ?」





葬儀屋の眉がピクリと動く。





ニヤニヤしていた口元が不機嫌そうにヘの字に曲がっていった。





「お黙り!」





怒りの混じった低い声が響き渡る。





葬儀屋はセバスチャンに突き刺さったままのデスサイズの髑髏の部分に足を乗せた。





その振動で揺れるデスサイズの刃がセバスチャンの身体に激痛を与える。





「っ・・・!」





声を上げては葬儀屋の思う壺。





セバスチャンは歯を食いしばり必死に耐えていた。





口内に苦い血の味が広がっていく。





「イ〜ッヒッヒッ、随分と苦しそうだねェ執事くん」





セバスチャンが苦痛に顔を歪めれば、葬儀屋はニッと口角を上げた。





「・・・はぁ・・・・・・やはり・・・所詮死神は死神ですね・・・・」





「・・・・どういう意味だい?」





セバスチャンの前髪を鷲掴みすると、ぐっと上に持ち上げ顔を覗き込んだ。





「死神の貴方では・・・・・お嬢様を不幸にすると・・・・言っているのです・・・」





真っ直ぐとした視線で葬儀屋を見るセバスチャン。





「小生が恵梨華を不幸にする?・・・ヒッヒ・・・笑えない冗談だ」





前髪を放すとセバスチャンの手に突き刺さっているデスサイズを勢いよく引き抜いた。





「・・・がッ・・・っは・・・・・」





ボタボタと大量の血がそこから溢れ出す。





「害獣風情の君に言われたくないよ」





葬儀屋は先程デスサイズが刺さっていた生々しい傷口を靴の踵で踏みつけた。





「ぐッ・・・ゴホッ・・・はぁ・・・・・」





咽ると口から血が出てきた。





両手を繋がれているため、それを拭う事が出来ないセバスチャン。





口端からだらしなく真っ赤な血が垂れる。





苦しそうに顔を歪めるセバスチャンだったが、その瞳はまだ力を失っていなかった。





「死神は・・・・・沢山の人間の死を・・・見届ける存在・・・・」





途切れ途切れになりながらも、必死に余裕を見せる。





「それ故に・・・死神の魂はみな・・・・・どす黒く・・・濁っているん・・・ですよ・・・」





「へぇ・・・なら、小生の魂も穢れていると?」





「ええ・・・・特に貴方は・・・ね」





ニヤリと口角を上げるセバスチャン。





その瞬間、葬儀屋は踏みつけていた足をぐりぐりと擦りつけた。





セバスチャンの身体中を激痛が駆け巡った。





「・・・ぐ・・はぁッ・・・・・やはり・・・その内に秘めたサディズムを・・・・隠しきれませんか・・・・」





「ヒッヒッ、人間を餌としてしか見ない悪魔に言われたくないね」





葬儀屋はセバスチャンの懐に入っていたナイフを取り出した。





そしてそのナイフでセバスチャンの顎を持ち上げた。





「やっぱり君は邪魔だよ。恵梨華が悲しんだとしてもそれはひとときの間だけ・・・」





持っていたナイフをセバスチャンの右肩に突き刺すと、床に落ちているデスサイズを拾い上げた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ