短編夢小説U

□死へのカウントダウン?それとも・・・
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「おやおや・・・今度は”R”だねェ・・・」





最近、小生の店に奇妙なお客さんが運ばれてくる。





目立った外傷は特にない。





しかし背中にアルファベットが刻まれていた。





始めは”T”の文字だった。





それから続々と運ばれてくるお客さんの文字を繋げると、”To Unde”





そして今回の”R”だ。





小生の予想が正しければ・・・次にやってくるお客さんは”T”。





そう、これは小生の名前だ。





「一体誰の仕業なんだろうねぇ〜?ヒッヒッ」





大体の予想はついている。





しかし小生は決して止めようとしない。





何故なら・・・





「名前の後にどんな文字が贈られてくるか・・・・あぁあ〜・・楽しみだねェ〜」





小生にとってヒトが殺されるコトなんてどうでもよかった。





それよりもコレを贈ってくれる君が小生に何を伝えたいのか。





考えるだけでゾクゾクしてしまうよ。





果たしてこのメッセージは小生の死へのカウントダウンか、それとも―。






















「ヒッヒッヒ・・・いらっしゃ〜い」





「・・・邪魔するぞ、アンダーテイカー」





伯爵が執事くんを連れて小生の店にやってきた。





「伯爵が来たというコトは・・・あの事件のコトか〜い?」





「既に被害者が多数出ているからな・・・」





「・・・奇怪しいと思わないかい?今回の事件、とても裏の人間が絡んでいるとは思えないよ」





そう、今回の事件は裏の人間の仕業ではない。





それなのに何故彼が・・・ファントムハイヴ伯爵が調べているのだろうか。





「・・・確かに今回は表の人間の犯行だろう。しかし僕の目的は彼女の憂いを晴らす事」





伯爵の瞳が鋭くなった。





その瞳こそ”悪の貴族”に相応しい。





でも今は・・・その瞳は見たくないよ。





「残念だけど伯爵・・・今回の事件、小生は何も知らないよ」





「・・・遺体はここに運ばれているんだろ?」





「まぁ、そーだけど〜?」





「ならば、その遺体を見せてもらいたい。・・・セバスチャン」





「御意」





執事くんは手袋をキュッと直した。





「だめだよ」





小生の言葉に伯爵と執事くんは驚いたような顔をしていた。





「・・・何故だ?」





「今回の事件、伯爵には手を引いてもらうよ」





「なっ・・・!」





伯爵は柩から立ち上がるだけで何も言わなかった。





いや、言葉を失っていたと言えるだろう。





問題は伯爵ではない。





彼だ。





勘のいい彼ならもう犯人に検討がついているのだろう。





穢れた悪魔の瞳が鋭い眼光で小生を捉えた。





―さあ、執事くん。君ならどう出る?



















「・・・葬儀屋さんは犯人の目星がついているご様子。つまり、この事件はもうすぐ解決すると?」





「何・・・?そうなのか?アンダーテイカー」





へぇ・・・君はそう来るんだね。





面白い、実に面白いよ執事クン。





小生は笑い出しそうになるのを必死に堪えながら言った。





「ああ・・・この事件はもうすぐ終幕を迎えるよ」





そう、もうすぐ・・・もうすぐで小生へのメッセージが完成する。





例え伯爵であろうと誰であろうと、邪魔などさせない。





「そうか・・・分かった。お前がそういうなら今回の事件は手を引くとしよう」





「ヒッヒッヒ・・さすがは伯爵だ、利口な選択だと思うよぉ〜?」





「事件が解決したら連絡をくれ。・・・邪魔したな」





伯爵は扉の方へと歩いていった。





執事くんは一瞬こちらを振り向くと意味深な含み笑いをした。





今回ばかりは君に助けられたよ、執事くん。





やっぱり君は小生の見込んだ通りの悪魔だ。





自ら真実を語ろうとはせず、伯爵の言う通りに動く駒・・・。





その駒をどう使うか、すべては伯爵次第。





立派に出来ているじゃないか、”執事”が・・・ね。
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