短編夢小説U

□悪魔の美学
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「ど、どういうつもりですか・・・ッ!」





「ん〜?ヒッヒッヒ・・・何がだ〜い?」





壁際に追い詰められているセバスチャン。





葬儀屋は片手を壁に付き、その顔を覗き込んでいた。





「貴方が求めるのは極上の笑いのはず・・・今から支払いますので退いて頂けますか?」





「ヒッヒッヒッ、小生は気まぐれなのさ、執事くん。・・・君が相手なら・・・報酬は笑いより・・・」





葬儀屋はセバスチャンの首筋にその形のよい唇を落とした。





「わ、私にそっちの趣味は無いのですが・・・」





ピクリと反応しながらも、眉を寄せて嫌悪感丸出しの表情をした。





「小生にもそんな趣味はないよ。・・・ただ・・・」





首筋を丁寧に舐め上げる。





ねっとりとした熱い感触。





生暖かい舌が、うねうねと首筋を這う。





「面白いじゃないか。悪魔が快楽に溺れ乱れる姿なんて・・・ヒヒヒッ」





「・・・私が大人しくやられるとでも?」





セバスチャンは悪魔の瞳を輝かせると、葬儀屋の背後に回ろうとした。





「おっと」





葬儀屋は片手でセバスチャンの胸倉を掴んで持ち上げた。





「くっ・・・・!」





「甘いよ執事くん。小生から逃げられるとでも思ったのか〜い?」





不気味に歪む口。





前髪の隙間からギラリと光る獣のような瞳がチラリと覗かせた。





ゾクッ―





狩りを楽しむようなその綺麗な瞳に、セバスチャンの心臓は高鳴った。





「ヒッヒ・・・小生は優しいからねぇ?選ばせてあげるよ。ほら・・・どこで犯されたい?」





荒々しく投げ捨てるように解放されたセバスチャン。





冷や汗をかきながらも、セバスチャンは扉の方に目を移した。





「(扉の外には坊ちゃんがおられる・・・隙をついて坊ちゃんを抱えて逃げるしかないですかね・・)」





顎に手を当て考え込むセバスチャン。





葬儀屋はセバスチャンの心情を読んだのか、ケラケラと嘲笑った。





「君は小生から逃げられない。だってそうだろ〜う?伯爵は君に情報の対価を支払うように命じたんだ」





葬儀屋の長い指がセバスチャンの頬に添えられた。





「今逃げれば命令違反・・・それは悪魔の美学に反するコトだよねェ?ぐふっ」





「・・・・・」





言い返す言葉が見つからない。





セバスチャンは悔しそうに唇を噛み締めるしかなかった。





「さあ・・・選んで?執事クン」





「・・・どこでもいいですが・・・ひとつお願いが・・・」





「ん〜?なんだ〜い?ヒッヒッ」





言いながらもセバスチャンの身体を撫で回す葬儀屋。





セバスチャンは眉を寄せながらその行為に耐えていた。





「・・・優しくなさらないで下さい・・・」





最後の願いだった。





悪魔が死神に抱かれるなど、屈辱でしかなかった。





ならばせめて、乱暴にされた方がましだ。





しかし葬儀屋はセバスチャンのそんな最後の願いすらもぶち壊した。





「だめだよ。・・・ヒッヒ・・・頭でどんなに嫌がっても身体は小生を求める・・・どうだい、面白そうだろう?」





「ッ・・・ロクでもない趣味をお持ちのようで・・・」





吐き捨てるように言うと、セバスチャンは顔をそらした。





葬儀屋はそんなセバスチャンの顎を持ち、無理矢理自分の方を向かせる。





「さあ・・・いい声で鳴いておくれよ?」
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