短編夢小説U

□瞳に潤いを
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「ねぇ、アンダーテイカー」





恵梨華を膝の上に座らせ、恵梨華の髪を遊んでいる葬儀屋に声をかけた。





「ん〜?なんだ〜い?」





相変わらず恵梨華の髪を弄る指を止めようとはしなかった。





「今日はお仕事とかないの?」





「ヒッヒ・・それは小生にも分からないなァ〜?死神を辞めた小生はもうリストを持ってないし・・・」





恵梨華の右側の髪がみつあみで結ばれていた。





「ぐふっ・・・小生とお揃いだね」





優しい笑顔で見つめる葬儀屋。





「・・・散歩とか行って来てもいいよ?」





「今日は出かけたくない気分なのさ」





「・・・なら、私が散歩に行って来ようかな・・・」





フイッと葬儀屋から視線をそらすと、恵梨華はおもむろに立ち上がった。





「ヒヒヒッ、なら小生も散歩に行こうかねェ〜?」





葬儀屋も立ち上がると、カウンターに置きっぱなしだった帽子を頭に乗せた。





「ん・・・それなら一人で行っておいでよ」





恵梨華は棺に腰を下ろした。





相変わらず恵梨華は葬儀屋を見ようとしない。





不思議に思った葬儀屋は恵梨華の顎を掴むと、無理矢理自分の方を向かせた。





「どうして小生を見ないんだい?」





「・・・別にそういう訳じゃないけど・・・」





顔は固定されてしまっている為、恵梨華は目線だけをそらした。





そんな恵梨華の態度に葬儀屋は眉を寄せ唇を尖らせた。





「こっちをお向きよ・・・!」





痺れを切らした葬儀屋は恵梨華の唇に自分の唇を押し当てた。





そして強引に舌をねじ込んでいく。





「・・・ッ・・・・・・・!」





恵梨華は慌てて葬儀屋の肩を押すが、びくともしない。





必死の抵抗をしたためか、恵梨華はバランスを崩してしまった。





バタンッと棺の上に倒れる恵梨華。





しかし葬儀屋の唇は離れない。





「・・・ふっ・・・・・・・ぁ・・・・」





甘い声が漏れる。





上気した肌が桃色に染まっていく。





恵梨華は恥ずかしくなりギュッと目を瞑った。





呼吸は乱れ、身体はどんどん熱くなっていく。





葬儀屋はキスだけでは足りなくなったのか、恵梨華の身体中を触りだした。





「・・・や・・・・ッ・・!」





ビクッと身体が反応してしまう。





もどかしい感覚が恵梨華を煽る。





快楽に溺れてしまわないように。





恵梨華は力の入らない身体で必死に抵抗してみせた。





そんな恵梨華に葬儀屋は苦笑いするしかなかった。





「・・・そんなに小生が嫌いかい?」





悲しそうな顔でそっと恵梨華を解放する葬儀屋。





恵梨華は葬儀屋に背中を向けた。





「嫌いだよ」





「・・・・・」





葬儀屋は言葉を失っていた。





そして静かにデスサイズを取り出した。





「(ああ・・・失うくらいならいっそこの手で・・・!)」





覚悟を決めた葬儀屋はデスサイズを握る手にそっと力を込めた。





そして恵梨華に気付かれないように鎌を振りかざす。





「(・・・さようなら、小生の愛しい恵梨華・・・)」





美しい黄緑色の瞳から綺麗な涙が零れる。





そして一気にデスサイズは振り下ろされた。
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