短編夢小説U

□ホワイトリリィに包まれて
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「ヒッヒッヒ・・・それじゃあ小生は行って来るからね。いい子に待っているんだよぉ〜?」





子供をあやすように頭を撫でる葬儀屋。





しかし恵梨華は不服そうな顔をしていた。





「なんで私を連れてってくれないの?」





「今回のお客さんはね・・・惨殺死体なのさ。そんなモノを恵梨華に見せたくないからねェ・・・」





その言葉に、恵梨華は眉を寄せていた。





「(・・・私は悪魔だからそんなの平気なのにね・・・)」





恵梨華は静かにため息をついた。





その様子を見ていた葬儀屋は、しゃがみこみ恵梨華の顔を覗き込んだ。





その綺麗な瞳は悲しみの色に染まっている。





「ぶーぶー」





拗ねたように口を尖らせる恵梨華。





葬儀屋はそんな恵梨華の額にそっと口付けをした。





「ちゃ〜んとお留守番出来るいい子にはお土産を買ってきてあげようね。ヒッヒ・・・何が欲しいんだ〜い?」





恵梨華はニヤリと口角を上げると、悪魔の瞳をギラリと光らせた。





「なら・・・魂が欲しいよ」





葬儀屋を困らせれば連れていってもらえるかもしれないと思った恵梨華。





しかし葬儀屋にそんな手は通じなかった。





「ヒッヒッヒ〜、いいよぉ〜?何人ぐらい欲しいのかなあ?」





形のよい唇が不気味に歪んでいく。





瞳は細められ、死神独特の冷酷な燐光を放っていた。





恵梨華は静かに息を呑んだ。





「(あぁ・・・やっぱりアンダーテイカーには敵わないなぁ・・・)」





苦笑いするしかなかった。





「・・・わかったよ。ちゃんとお留守番してるから早く帰ってきてね?」





「ヒヒヒッ、勿論さァ」





ふわりと恵梨華を包み込むと、恵梨華の首筋にキスを落とした。





「―それじゃあ、行ってくるね」





ヒラヒラとコートの袖を振りながら、葬儀屋が出かけていった。





葬儀屋が居なくなった途端、店内は静寂に包まれた。





「・・・はぁ、暇だなぁ・・・」





ボソリと呟いた声は独りぼっちの店内へと消えていく。





恵梨華はポリポリと頭をかきながら、暇つぶしの方法を探していた。





何もしないまま、時間だけが過ぎていく。





「あーあ、一人ってつまんないなぁ〜」





棺に座りながらつまらなさそうに足をバタバタする。





―ピコーン!





何かを思いついたのか、恵梨華の表情は急に明るくなった。





「そうだ、誰かに来てもらえばいいんだ!」





ひょいっと棺から立ち上がると、恵梨華は奥にある書斎へと向かった。





ギィィィィ・・・





長い間使われていなかった書斎の扉が音を立てて開かれる。





「ケホッ・・・ん〜、どこに仕舞ったかなぁ〜」





唇に人差し指を当てながらキョロキョロと書斎の中を探す恵梨華。





「お、あったあった」





ホコリが被った一冊の本を取り出すと、恵梨華はパッパッと手でホコリを払った。





「誰にしようかなぁ・・・えーっと」





ペラペラとページをめくる恵梨華。





「できれば簡単に呼べる友達がいいよね」





どうやら恵梨華は悪魔の友達を呼び出す事にしたようだ。





しかしここである事に気付く。





「・・・あ、生贄がいないじゃん・・・!」





ポカーンと間抜けな顔をする恵梨華。





仕方なく本を仕舞うと、今度は違う本を取り出した。





その本には死神達の連絡先がびっしり書かれていた。





その中から、とある二名の名前を探した。





「っとー・・・ウィリアム・T・スピアーズ、ウィリアム・T・スピアーズっと・・・」





悪魔を害獣風情として忌み嫌うウィリアムだったが、恵梨華とは仲がいい。





ウィリアムの名前を見つけると、恵梨華は本を持ったまま書斎をあとにした。





店まで戻ってくると、恵梨華はカウンターの椅子に腰掛けた。





そして電話機に書かれている番号を入力する。





少しドキドキしながら待っていると、ウィリアムが電話に出た。





「あ、ウィル?」





「珍しいですね、恵梨華さん。どうしたんですか?」
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