連載夢小説T

□小さなお客さんU
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「アンダーテイカー、朝ごはんはまだかしら?」





つまらなさそうにカウンターに座る恵梨華。





大胆に足を組むその姿は、やはり少女の姿には似合わないものだった。





アンダーテイカーとお揃いの黒い服に身を包み、その親指にはあの時貰った指輪がはまっている。





恵梨華の声にアンダーテイカーが店の方にひょっこり顔を出した。





「ごめんよ恵梨華。もうすぐ焼きあがるからいい子に待っていておくれ?」





「・・・いつになったらその子供扱いが治るのかしら?」





若干眉を寄せながらアンダーテイカーを冷ややかな目で見た。





「ぐふ・・・そのうち治るさ」





アンダーテイカーはそれだけいうと、キッチンの方へと姿を消した。





「(そのうち・・・ねぇ。・・・私がここに着てからどれくらいの月日が経ったと思っているのかしら・・・)」





そんな事を考えていると、ギィィという音を立てて、店の扉が開いた。





恵梨華はいつものように子供らしく振舞った。





「あ、いらっしゃい!あんだーてい・・・」





扉の前に立っていたのは子供だった。





その姿を見た途端、恵梨華は不機嫌そうに眉を寄せた。





「ここは子供が来るような所じゃないわよ」





カウンターから飛び降りると、恵梨華はその子供の方へと歩いていった。





「ぼく?来る所を間違えてしまったのかしら?」





クスクスと笑いながら嫌味を言う恵梨華。





「だ、誰なんだお前は・・・!」





その子供は恵梨華の存在に驚いた様子だった。





そんな時、アンダーテイカーがキッチンから戻ってきた。





「ヒッヒッヒ・・・恵梨華〜?クッキーが焼けたよぉ〜」





「あら本当?・・・今、変な子供が店に来てしまって困ってる所なのよ」





「ん〜?・・・ああ、伯爵じゃないか」





シエルの存在を確認すると、アンダーテイカーはゆっくりと柩に腰掛けた。





「アンダーテイカーの知り合いだったのね。からかってごめんなさいね」





口では謝っているが、悪びれる様子はない恵梨華。





シエルは拗ねたように少し口を尖らせていた。





「それよりアンダーテイカー、この子は一体誰なんだ?」





「ぐふふ・・・”この子”なんて言うのはやめておいた方がいいよぉ〜?」





「・・・?どうしてだ?」





「彼女はこう見えても伯爵よりもずーっと年上なのさ」





シエルは信じられない様子で恵梨華を見た。





どう見てもシエルより年下、もしくは同い年くらいにしか見えなかった。





シエルの視線に気づいた恵梨華は、クスリと笑った。





「フフッ、よろしくね、伯爵さん?」





「っ・・・!///」





恵梨華の大人びた笑顔に、シエルは頬を真っ赤に染めていた。





その様子を面白く無さそうに見ているアンダーテイカー。





「・・・伯爵〜?言っておくけど恵梨華は小生のモノだからね」





嫉妬混じりの棘のある言い方。





シエルは冷や汗をかきながら静かに息を呑んだ。





緊迫した雰囲気を壊したのは、恵梨華だった。





「おやめなさいよ、アンダーテイカー。伯爵が怯えちゃってるでしょう?」





「ヒッヒッヒ・・小生はただ本当のコトを言っただけさ」





アンダーテイカーの態度にムカついた恵梨華は、シエルの頬にそっと手を添えた。





「ごめんなさいね、伯爵さん。アンダーテイカーってば・・・ロリコンなのよ」





「なっ・・・!///」





恵梨華の言葉に顔を真っ赤にするアンダーテイカー。





「ご、誤解を招くようなコト言わないでおくれよ!」





「あら?事実でしょう?」





ニヤリと口角を上げる恵梨華。





そして視線をシエルに戻すと、色気のある声で囁くように言った。





「彼ったら・・・毎晩こんな小さな身体を求めてきて大変なのよ・・・」





シエルは耳まで真っ赤にしながら固まってしまった。





「ちょ、ちょいと恵梨華!」





焦ったアンダーテイカーは、恵梨華を自分の懐に隠した。





「フフッ、可愛い坊やね。面白いわ」





恵梨華は面白そうにクスクスと笑っていた。
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