連載夢小説T

□小さなお客さんV
1ページ/5ページ

真夜中の散歩。





ひんやりと冷たい空気と静まり返った街。





そんなロンドンの街を月明かりは優しく照らしていた。





「やっぱり散歩は真夜中に限るわね」





「ヒッヒッヒ〜、そうだねぇ。・・ま、小生は恵梨華と一緒ならどこでも幸せだよぉ?」





肩に乗っている恵梨華を愛おしそうに見つめるアンダーテイカー。





太陽が出ていないせいか、アンダーテイカーの瞳が際立って見える。





綺麗な黄緑色の燐光が美しい。





「それにしても・・・相変わらず綺麗な銀色ね・・・」





右手でアンダーテイカーのその長い髪の毛をすくった。





優しい月明かりに照らされて、その銀色はキラキラと輝いていた。





さらさらと音を立てて恵梨華の指の隙間から零れ落ちる。





「ぐふ・・・恵梨華より美しいモノなんてないさ」





恵梨華の頬が桃色に染まっていく。





「よ、よくもまぁそんな気障な台詞が恥ずかしげもなく言えるわね」





フイッと顔を背けながら言うその後姿をアンダーテイカーは優しい瞳で見つめていた。





「ん・・・?」





顔を背けた恵梨華の視線の先に、赤い何かが映りこんだ。





「ねぇアンダーテイカー、アレは何かしら?」





「ん〜?」





恵梨華が指差す方を見ると煙突の上に赤い何かが見える。





「この気配・・・確かマダム・レッドの執事やってた死神クンだよ」





「ふーん・・・面白そうね」





「いってみるか〜い?ヒッヒッ」





「フフッ、いいわよ」





アンダーテイカーは恵梨華を肩から下ろすと、お姫様抱っこをした。





「しっかり掴まってておくれよぉ〜」





恵梨華が服を掴んだのを確認すると、アンダーテイカーは勢いよく飛び上がった。





銀色の髪が美しく揺れる。





その姿は死神というよりは天使のように美しかった。





「ヒッヒッヒ・・・やあ〜〜、死神クン」





「アーン?・・・誰かと思えば葬儀屋じゃナイ?・・・で?そのガキは誰なのヨ?」





”ガキ”という言葉にカチンと来た恵梨華。





「レディに対して失礼じゃなくて?”お・じ・さ・ん”」





「なっ・・・!」





恵梨華の言葉にグレルはパクパクと口を動かしていた。





アンダーテイカーは少し困ったような表情で苦笑いをした。





「一応、彼は小生より年下なんだけどねぇ・・・」





「クスッ、ならアンダーテイカーはおじいさんかしら?」





「や、やめておくれよ・・・!」





揉めだす二人にグレルは怒りを露わにした。





「チョットアンタ達!いい加減にしなさいヨッ!」





チェーンソー型のデスサイズを起動させると、二人目掛けて勢いよく振り下ろした。





「おっと」





アンダーテイカーはすかさずその攻撃を華麗にかわした。





グレルのデスサイズは空を切ると虚しく屋根に突き刺さった。





静かなロンドンの街に瓦礫の崩れるような音が響いた。





「おやおや死神クン・・・小生と恵梨華のイチャイチャを邪魔する気か〜い?」





「誰がいつアナタとイチャイチャしてたって言うのよ・・・!」





眉間にしわを寄せる恵梨華。





「ゴチャゴチャうるさいわヨッ!二人まとめてあの世へ送ってあげるワ」





「ヒッヒッヒ〜、出来るかなぁ〜〜〜?」





アンダーテイカーはニィッと不気味は笑みを浮かべると、どこからともなくデスサイズを取り出した。





身の丈よりも長い大鎌のデスサイズがギラリと怪しい光を放った。





それを見ていた恵梨華は、感心したような表情をしていた。





「へぇ・・・アンダーテイカーの武器はあの変な赤いおじさんと違って素敵ね」





「ヒヒヒッ、恵梨華〜?そんなコト言ったら死神クンが可哀相だよぉ〜?」





「へ、変な赤いおじさん・・・」





案の定、その言葉はグレルの心の奥深くに突き刺さった。





そしてへなへなと力なくその場に崩れ落ちた。





「あ〜あ、完全にやる気を失ってしまったようだねェ?ヒッヒッ」





アンダーテイカーはその場に座り込んでしまったグレルの頬をその長い爪でツンツンと突付いた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ