連載夢小説T
□小さなお客さんW
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「へぇ・・・死神ってそんなに沢山いるのね」
「ソーヨ☆・・・まぁ恵梨華はアタシと葬儀屋さんしか見た事ないものネ」
恵梨華はカウンターの上に座り、グレルはカウンターに持たれかかりながら話している。
「そうね。アナタ達を見てると死神のイメージがどんどん壊されていくわ」
「そんなコトないわヨ〜!アタシはAAAの成績を持つ優秀な死神なのヨ☆」
「君は実技だけだろ〜う?ヒッヒッヒッ」
柩の上で寝そべっていた葬儀屋がニヤニヤしている。
グレルは図星をつかれ、焦ったように葬儀屋を見た。
「ナ、ナニヨ!そんなコトいちいち言わなくてもいいでショ!?」
「自分だけ恵梨華の前でいい格好しようなんて許さないよぉ?」
「アーラ?アタシがAAAだからって僻まないでヨ」
「ぐふ・・・別に小生は僻んでなんかいないさ」
意味ありげに含み笑いをする葬儀屋。
その不気味な笑みに、グレルは少したじろいだ。
「そうだ、恵梨華。死神界に行ってみるかい?」
「死神界に?」
「ソーネ!恵梨華なら皆大歓迎してくれるわヨ!」
グレルは恵梨華の両手を握りはしゃいでいた。
恵梨華はそんなグレルに苦笑いしているだけだった。
ゴチン・・!
鈍い音が響く。
投げられたのであろう頭蓋骨が床に転がった。
「いったぁ・・・チョット!イキナリ何するのヨ!」
「小生の恵梨華に気安く触らないでもらおうか」
葬儀屋は拗ねたように口を尖らせていた。
恵梨華は、「またか・・・」といった様子で軽くため息をついた。
「ほら・・・死神界に行くんでしょう?」
「ヒッヒッヒ・・・何だか新婚旅行みたいだねェ〜?」
「・・・アタシの存在、忘れないで欲しいワ」
葬儀屋はグレルを無視し、恵梨華を抱きかかえた。
「さ、馬鹿な死神クンは放っておいて、行こうね〜」
店の扉を蹴ると、二人はそのまま闇夜に消えていった。
一人店に残されたグレルは暫く呆然と立ち尽くしていたが、ハッとして二人のあとを追った。
「へぇ・・・案外普通なのね、死神界って」
恵梨華は死神界につくと辺りを見回して言った。
「そうだねぇ・・・もう少し不気味な場所だと思ったか〜い?」
「そうね・・・その方が面白かったわ」
恵梨華の言葉に葬儀屋は肩を落として落ち込んだ。
ガッカリしている葬儀屋を気遣ってか、恵梨華は話をそらした。
「それよりアンダーテイカー、あの建物は何かしら?」
「ん〜?」
葬儀屋は恵梨華が指差す方を向いた。
そこには大きな真っ白の建物が建っていた。
「ああ・・・あれは死神図書館だよ」
「死神図書館?死神達が勉強でもするところかしら?」
「ちょっと違うねェ・・・あそこは人間たちのシネマティックレコードが収められているのさ」
恵梨華は聞きなれないその言葉に首を傾げた。
「ま、行ってみればわかるさ」
葬儀屋は恵梨華を肩に乗せると、図書館へと向かった。
向かう途中、すれ違う死神達が恵梨華の事を好奇の目で見ていた。
恵梨華はその視線に眉を寄せた。
そんな恵梨華に気付いた葬儀屋は、ふわりと優しく微笑みながら言った。
「気にするコトはないさ。死神界に人間がいるのが珍しいだけだよ」
「フフッ・・・こんな私でも人間扱いしてくれてるのね。何だか嬉しいわ」
恵梨華は自嘲的に笑った。
葬儀屋は前に恵梨華が死に掛けた事を思い出してしまい、ズキリと心が痛んだ。
不安そうな表情の葬儀屋に恵梨華はそっと耳打ちをした。
「大丈夫・・・私は死なないわよ」
「恵梨華・・・」
情けない顔で恵梨華を見上げる葬儀屋。
「クスッ・・・アナタ、酷い顔してるわよ?」
茶化すように言えば、たちまち葬儀屋の表情は和らいでいった。