連載夢小説T

□小さなお客さんY
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「大嫌いな君に・・・最高の結末をプレゼントしよう」





ニタリと不気味な笑みを浮かべる葬儀屋。





次の瞬間、葬儀屋の姿が見えなくなったと同時に身体に痛みが走った。





「うっ・・・!」





思わず痛んだ部分を手で掴む恵梨華。





ぬるりとした生暖かい感触。





驚いて手を確認すると、自らの血で真っ赤に染まっていた。





「ヒッヒッヒ〜・・その苦痛に歪んだ顔・・・・ゾクゾクするよォ〜」





「い・・・いつからそんな悪趣味に・・・」





「悪趣味?この美しさがわからないなんて・・・君もまだまだだねェ?」





姿が消える。





また別の箇所に痛みが走る。





目にも止まらぬ速さで恵梨華の身体はどんどん切り刻まれていった。





「イッヒッヒッ、段々気持ちよくなってきただろ〜う?」





致命傷はない。





深い傷はなく、どれも浅い傷ばかり。





それはまるで恵梨華を甚振る事を楽しんでいるかのよう。





「・・・ッ・・・・・・ハァ・・・・そんな・・・訳・・・・・」





恵梨華の息が段々荒くなっていく。





立っている事も出来なくなり、恵梨華はその場に崩れ落ちた。





「おやおや・・・もうギブアップか〜い?」





ポタポタと恵梨華の血が滴り落ちるデスサイズ。





葬儀屋はその刃を口元に持っていくと、ペロリと舐め取った。





「ぐふっ・・・君の血は極上の味がするよ」





恵梨華が葬儀屋を見上げると、冷たい黄緑色が光っていた。





見た事もない冷徹な瞳。





薄ら笑いを浮かべながら恵梨華を見下ろす。





恵梨華は恐怖のあまり、身体が震えた。





「(これが・・・死神なのね・・・)」





「ヒヒヒッ・・・小生が怖いか〜い?」





「はっ・・・・・誰が・・・・アナタなんか・・・・・ッ!」





「ヒッヒ・・身体は随分と正直だよぉ?」





葬儀屋のデスサイズが恵梨華の手に突き刺さった。





「・・・ぃ・・・あああアアッ・・!」





「随分といい声で鳴くねェ・・・おやぁ?」





葬儀屋は恵梨華の身体を見た。





先程まであった無数の傷はすっかり綺麗に治っている。





「へぇ・・・君は変わった身体をしているね」





その言葉に恵梨華はハッとした。





「(今・・・知らない口ぶりだったわね・・・)」





目の前の葬儀屋を疑いの眼差しで見る恵梨華。





しかし葬儀屋にとってはそんな事はどうでもよかった。





「ぐふふ・・面白いよ、君・・・・一体どこまでしたら死ぬんだろうねェ〜?」





恵梨華の手に突き刺さっていたデスサイズを勢いよく抜く。





途端にそこから大量の血が溢れ出した。





「うぐっ・・・・いッ・・・・・・」





恵梨華はもう片方の震える手で、必死に傷口を押さえた。





そんな恵梨華を嘲笑うように、葬儀屋は恵梨華の肩を蹴飛ばした。





「・・・ッは・・・・・・・」





もはや恵梨華に起き上がる力は残されていない。





葬儀屋はニヤリと笑うと、恵梨華の心臓目掛けてデスサイズを振り下ろした。





「・・ぃ・・・・・・・ぁ・・・・」





叫び声を上げることも出来ず、真っ直ぐと前を見る事しかできない。





恵梨華にはもう指の一本すら動かす力が残っていなかった。





葬儀屋は心臓に突き刺さっているデスサイズの上に飛び乗った。





そしてしゃがみ込むとその黄緑色の鋭い瞳が恵梨華の顔を覗き込んだ。





「ヒ〜ッヒッヒッヒッヒ・・」





薄れゆく意識の中、葬儀屋の笑い声だけが耳に残る。





段々と目が霞んでいく。





ぼやけた視界の中に映るのは二つの黄緑色だけ。





そして目を開けている事も出来なくなり、恵梨華は静かに目を瞑った。
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