連載夢小説T

□小さなお客さん\
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ひんやりとした冷たい空気。





聞こえてくるのは恵梨華と葬儀屋の足音だけ。





階段は地中の奥深くまで続いていた。





「・・・一体どこまで続いているのかしら」





「行き先はあの世・・・かもしれないよぉ〜?ヒッヒッヒッ」





「フフッ、それも面白そうだわ」





他愛もない会話をしていると、目の前に扉が見えてきた。





「鍵がかかってないといいけど・・・」





恵梨華は扉を開けようと力を入れたが、びくともしなかった。





「ああ・・・扉が錆びているよ。小生の恵梨華の手を汚すなんて・・・いけない扉だねェ・・・」





葬儀屋は恵梨華を抱きかかえると、思い切り扉を蹴り飛ばした。





金具が外れ、バタンッと扉が奥に倒れた。





「クスッ・・・まさか扉にまで嫉妬するなんてね」





「う、うるさいよ!」





葬儀屋は顔を真っ赤にしながらそっぽを向いた。





恵梨華はケラケラと笑いながら、葬儀屋の腕を振り解き、部屋の中へと入っていった。





「・・・案外狭い部屋ね」





ランプの明かりが届くぐらいの狭い空間。





特に何かが置かれている訳でもなく、部屋の中央に大きな棺があるだけだった。





「ただのお墓だったのかしら・・・」





恵梨華はおもむろに棺の蓋に足をかけた。





「ちょ、ちょいと恵梨華・・・あまり中の物に触らない方が・・・」





「あら?アンダーテイカーは意外と臆病者なのね。クスッ」





ぐっと足に力を入れると、ゆっくりと棺の蓋が横にずれていく。





すると中から黒い煙のようなものが出てきた。





「なっ・・・何よコレ・・・」





恵梨華は慌てて棺から離れるが、黒い煙は恵梨華の周りにまとわりついて離れない。





「恵梨華!?」





邪悪な気配がする煙、葬儀屋は慌てて恵梨華の手を握ろうとした。





バチッ・・!





差し出した葬儀屋の手は結界によって弾かれてしまった。





「け、結界・・・?!恵梨華!気をつけておくれ・・!」





「嫌・・・ッ!何よコレ・・・!」





恵梨華は手で黒い煙を払おうとするが、その煙はとうとう恵梨華の全身を包み込んだ。





すると黒い煙の中から恵梨華と同じくらいの美少年が姿を現した。





髪はシエルと同じぐらいの長さの黒髪。





そして瞳は悪魔の証である紅。





葬儀屋は怒りを露わにしながら、その美少年の襟首を掴んだ。





「恵梨華をどこにやったんだい!?」





しかし少年は不思議そうな顔をしていた。





「アナタ・・・何言ってるのよ?」





独特の口調。





声や姿は違えど、その少年は紛れもなく恵梨華だった。





「恵梨華・・・なのかい・・・?」





葬儀屋は掴んでいた襟首をそっと離した。





「・・・?まさか愛しい恋人の姿も忘れてしまったのかしら?」





「い、いや・・・・それより恵梨華、何か変わったトコはないかい?」





「変わった所・・・むしろなんだかいい気分だわ。身体が軽いのよ」





悪魔の瞳が優しく細められる。





その挑発的な笑顔に葬儀屋は魅入られる。





しかし今の恵梨華の身体は少年、そして悪魔である。





葬儀屋は複雑な心境で苦笑いするしかなかった。





「と、とにかく君が無事でなによりだ・・・」





「・・・あまり嬉しそうじゃないわね」





恵梨華は不機嫌そうな声を出した。





このままではいけないと思い、葬儀屋は意を決して恵梨華に真実を打ち明ける事にした。
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