超短編夢小説U

□気にするべきはそこではない
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「アンダーテイカー!」





店に入るや否や、いきなり葬儀屋に飛びつく恵梨華。





「おわっ・・・・・ヒッヒ・・・そんなに慌てなくても小生はどこにも行ったりしないよぉ〜?」





「だって最近遊びに来れなかったから・・・」





悪魔の恵梨華は一度契約してしまうと、暫く店に立ち寄れない。





会えなかった分の寂しさを埋めるかのように恵梨華は頬をスリスリと葬儀屋の服に擦りつけた。





ホワイトリリィの甘い香りが鼻を優しくくすぐった。





恵梨華の大好きな葬儀屋の匂いだった。





「おやおや・・・小生の理性にも限界があるんだけどねぇ〜?ぐふっ」





「ひ、昼間から盛らないでよ・・・ド変態!」





ビシッと言いつつも葬儀屋の匂いを嗅ぐ事をやめようとしない恵梨華。





服の匂いだけでは満足出来なくなったのか、恵梨華は顔を葬儀屋の首筋に埋めた。





恵梨華の熱い吐息が首にかかり、葬儀屋の身体がピクリと跳ねる。





「ど、どっちが変態なんだい・・・っ!?///」





葬儀屋は顔を真っ赤にしながら手で首筋を押さえた。





初々しい葬儀屋の反応に、恵梨華の深紅の瞳は楽しそうに細められた。





ニッと口角を上げ、尖った八重歯がむき出しになる。





そして今度はその長い銀色の髪に顔を埋めた。





「いつ触ってもサラサラしてて気持ちいいね・・・・・ん?」





愛おしそうに髪をスリスリしていた恵梨華の動きがピタリと止まった。





不審に思った葬儀屋は、恐る恐る恵梨華に声をかけた。





「ど、どうしたんだい・・・?」





「・・・誰かと会った?」





「あ、ああ・・・恵梨華が来る前に伯爵と執事くんが来てたんだよ」





「ふーん・・・」





恵梨華は親指の爪をギリリと噛んだ。





「(あのガキ・・・やはり殺しておくべきだったわ・・)」





恵梨華の瞳がギラリと光る。





怒りと憎しみに満ちたその瞳は、悪魔に相応しいものだった。





「恵梨華・・?」





禍々しい空気を取り巻いている恵梨華に声をかける葬儀屋。





「ん?どうしたの?」





何事もなかったかのようにニッコリと笑顔になる恵梨華。





葬儀屋にとってはその笑顔が逆に怖かった。





「いやぁ・・・何か勘違いしているみたいだったからね〜?」





「勘違い?」





「そ。小生は情報屋。伯爵はただ、裏の情報を求めに来ているだけなのさ」





「・・・情報屋ならアンダーテイカーだけじゃないよね。何でアンダーテイカーを選ぶんだろう?」





恵梨華は暫く考えると、いきなり葬儀屋のコートのボタンを外し始めた。





「ちょ、ちょいと恵梨華!?こ、こんなトコで・・・お、お止めよ・・!」





店の扉には鍵すらかかっていない。





そんな状況でいきなり服を脱がし始める恵梨華に、葬儀屋は慌てていた。





しかし恵梨華を拒絶する事は出来ない。





葬儀屋は顔を真っ赤にしながら、されるがままの状態になっていた。





「ふふふ・・・口では嫌がってる割に、全然抵抗しないのね」





「そりゃあ・・・相手が君だからねェ〜?ヒッヒッ」





「でも残念。私の目的は・・・・こっちだよ」





恵梨華は葬儀屋のコートの中から死神の鎌を取り出した。





そしてその刃の輝きを確認すると、恵梨華は扉の前に立っていた。





「ちょっと借りるね!」





可愛いポーズを決めると、恵梨華はそのまま店を出て行ってしまった。





一人残された葬儀屋はただただ呆然としていた。





「せ、せめて小生の身体を鎮めてからにしておくれ・・・!」





明らかに気にするべき所はそこではない。





葬儀屋は大きなため息をつきながら、恵梨華の気配を追った。





行き先の見当は大体ついていた。





そう、恵梨華の嫉妬の矛先である”ファントムハイヴ伯爵”のお屋敷。





「ヒッヒッヒ・・・妬いてくれるのは嬉しいけど・・・小生を抱いてからにして欲しいねェ〜?ぐふふっ」





ニヤリと口角を上げながら、恍惚な表情を浮かべる葬儀屋だった。



-END-

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