超短編夢小説U

□美術展の日
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恵梨華と葬儀屋は、シエルの招待で美術館に遊びに来ていた。





「やっほー、シエル、セバスチャン。今日は招待してくれてありがとうね!」





ブンブンと元気よく手を振る恵梨華。





「よく来てくれたな。今回は有名な絵画が沢山出展されているそうだ」





「ヒッヒッヒ〜、伯爵もたまにはいいコトをしてくれるねェ〜?」





「・・・”たまに”は余計だぞ・・・」





シエルは困ったようにため息をついた。





タイミングを見計らったようにセバスチャンがそんなシエルに話しかけた。





「坊ちゃん、そろそろエリザベス様がお見えの時間ですよ」





「そうか・・・じゃあ恵梨華、アンダーテイカー、またあとでな」





気乗りしないのか、シエルは重い足取りで静かに去っていった。





「―さて、折角美術館に来たんだ。小生たちも楽しませてもらおうかねェ〜?」





「そうだね、行こ!」





歩き出す恵梨華。





しかし葬儀屋は一向に動こうとしない。





ついてこない葬儀屋を不思議に思った恵梨華が振り返った。





「アンダーテイカー?行かないの?」





首を傾げながら問いかける。





すると葬儀屋は服の袖で恵梨華を手招きした。





戸惑いながらも葬儀屋の所に戻る恵梨華。





「どうしたの・・・?」





「・・・・・手・・・」





拗ねたように口を尖らせながらボソリと呟く。





「えっ・・・手?」





「そうだよ、手だよ手。小生の手はここにあるよぉ?」





訳が分からない事を言い出す葬儀屋。





彼が何を言いたいのか恵梨華には分からなかった。





「え・・・うん。あるね、そこに」





冷たい恵梨華の態度に、葬儀屋はその場にしゃがみこんでしまった。





そして両手で顔を覆うと、大袈裟に泣き出した。





「ひ、ひどいよ恵梨華・・・うぅ・・・」





恵梨華はピクリと眉を動かすと、葬儀屋の帽子をヒョイッと取り上げた。





帽子を取られ、葬儀屋は何かと思いそっと顔を上げた。





恵梨華はその瞬間を待っていたように、顔を覆っていた前髪を退ける。





美しい黄緑色の燐光を放つ瞳と目が合う。





その瞳に涙など見当たらない。





「う、嘘泣き・・・!?」





葬儀屋は恵梨華の言葉にビクリと肩を震わすと、また両手で顔を覆った。





「もうバレてるよアンダーテイカー・・・」





ため息混じりに呟く恵梨華。





葬儀屋は恐る恐る顔を上げた。





「小生はただ・・・君と手を繋ぎたかったんだよ・・・」





「なら最初からそう言ってくれればいいじゃん」





恵梨華は盛大にため息をついた。





葬儀屋は残念そうに俯いた。





すると葬儀屋の視界に手が差し出された。





「ほら・・・繋ぐんでしょ?」





少し頬を赤らめながら視線をそらしている恵梨華。





フッと葬儀屋の顔が明るくなった。





「ヒッヒッヒ・・大好きだよ、恵梨華」





差し出された手を握る葬儀屋。





指と指が絡まりあう。





葬儀屋の顔を見ることはなかったが、恵梨華は優しい笑みを浮かべていた。



-END-

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