超短編夢小説U

□オレンジデー
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シルクハットに黒い布カバーを被せた漆黒の帽子。





神父服の上にはゆったりとした葬列用コート。





形の整った唇を三日月のように歪ませ怪しい笑みを浮かべる。





何もかもいつもと同じ葬儀屋。





しかし、今日だけは違っていた。





「ア、アンダーテイカー・・・?!」





朝、眠い目を擦りながら恵梨華が店内へと降りてきた。





しかし、葬儀屋の姿を見た途端、脳が一気に覚醒していく。





「ヒッヒッヒ〜、おはよう恵梨華。どうしたんだ〜い?そんなに声を荒げて・・・」





いつもと変わらない口調、いつもと変わらない仕草。





ただ一つ違っていたのは、ご自慢のその長い髪だった。





美しい銀色だったはずの髪は、オレンジ色に染まっていた。





「あ・・・い、いや・・・」





あまりにもいつも通りの葬儀屋に、恵梨華は口をパクパクしながら言葉を失っていた。





「ん〜?」





カウンターの椅子に座っていた葬儀屋が立ち上がった。





そして恵梨華に近づくと、その顔を覗きこむ。





「可笑しな子だねェ〜?ぐふっ」





前髪に隠れている瞳は妖しく細められる。





恵梨華はゴクリと息を飲んだ。





「そ、その髪・・・どうしたの?」





「おやぁ?恵梨華は知らないのか〜い?」





そう言うと葬儀屋はカウンターの上に置いてあったリボンを自分の首に巻いた。





「今日はオレンジデーだよ。ぐふっ」





「オレンジデー・・?オレンジデーって言ったら、オレンジ色の物を贈り合う日・・・だよね?」





「ああ、そうさ・・・ヒッヒ・・・もうわかるだろう?」





ニヤニヤしながら恵梨華に再び近づく葬儀屋。





その柔らかな唇が恵梨華の唇に押し当てられた。





「んっ・・・・・・!・・・まさか、プレゼントって言うのは・・・」





「ヒ〜〜ッヒッヒッ!そのまさかだよ、恵梨華・・・!」





ヒョイッと軽々と恵梨華を持ち上げる。





突然身体が宙に浮いたような感覚に、恵梨華は思わず暴れた。





「ちょ、ちょっと・・・!」





「恥ずかしがるコトはないさ。ぐふふ・・・小生自身がプレゼントだなんて・・・嬉しいだろ〜う?」





チュッと軽いリップ音を立てて葬儀屋の唇が恵梨華の額に落とされる。





恵梨華の必死の抵抗も虚しく、葬儀屋は恵梨華を抱きかかえたまま寝室へと消えていった。



-END-

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