短編夢小説V

□その色気は猫になっても変わらないT
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恵梨華と葬儀屋が猫になってしまってから数日が経過したある日の事。





シエルは猫語翻訳機なる物を作り、二人の喋っている事が分かるようになっていた。





「はぁ・・・それにしても突然猫になるなんて・・・可笑しな話だな」





「ぐふっ・・・伯爵〜?妬いているのか〜い?ヒッヒッ」





椅子に座ってるシエルを挑発するようにニヤニヤと見る葬儀屋。





「なっ・・・!どうしてそうなるんだ・・!」





シエルは少し頬を赤らめ、慌てた様子だった。





「ほら・・・こうして小生は恵梨華と同じ猫・・・ヒッヒ・・・どうだい、羨ましいだろう?」





不気味な笑みを浮かべる銀の猫。





「ッ・・・・・!」





シエルは返す言葉が見つからず、顔を真っ赤にしながら黙ってしまった。





「ちょ、ちょっとアンダーテイカー・・・あんまりシエルをいじめちゃだめだよ?」





見兼ねた恵梨華は葬儀屋を注意した。





先程まで勝ち誇ったような笑みを浮かべていた葬儀屋だったが、恵梨華に怒られてシュンとしてしまった。





「うぅ・・・恵梨華は伯爵の肩を持つんだね・・・」





綺麗な瞳が悲しみの色に染まる。





一瞬しょんぼりしている葬儀屋に騙されそうになるが、これはいつもの手である。





「そ、そんな顔しても駄目なんだからね!」





案の定、恵梨華のこの言葉を聞いた途端、ニィッと葬儀屋の口元が吊り上った。





「ヒヒヒッ、それは残念だ」





そんな会話をしていると、突然部屋の扉が開かれた。





「坊ちゃん、お二人を元に戻す方法が見つかりましたよ」





扉の前に立っていたのはセバスチャンだった。





シエルはセバスチャンの登場に安心したのか、ホッとした表情を浮かべていた。





「・・・よし、早速その方法を試すぞ」





セバスチャンが見つけた方法とは、古い魔術のようなものだった。





しかしその方法には元に戻る確証はなく、実験的に葬儀屋が先にそれを行うことにした。





「いいですか?葬儀屋さん。私がいいと言うまで・・・決してそこを動かないでくださいね」





「・・・その前に、小生の可愛い恵梨華を離してもらいたいんだけどねェ?」





葬儀屋はその黄緑色の綺麗な瞳でセバスチャンを睨みつけた。





「おや、嫉妬・・・ですか?クスッ・・・・猫の貴方に睨まれても、何とも思いませんがね」





「これから元に戻る小生に、よ〜くもそんな口が聞けるねェ〜?ヒッヒッ」





ニヤリと口端が上がる。





しかしセバスチャンが動じる事はなかった。





「よろしいのですか?私がこのままお二人を元に戻さなくても・・・」





悪魔独特の笑い方で葬儀屋を嘲笑うセバスチャン。





余裕が無くなったのか、葬儀屋は少し慌てた様子だった。





「御託はいいから・・・さっさとやっておくれ!」





「ふふ・・・・それでは、いきますよ?」





セバスチャンが魔方陣に最後の手を加えると、魔方陣が起動を始めた。





パァッと光に包まれる部屋。





「・・・くっ・・・・・!」





葬儀屋は身体中を襲う痛みに、その綺麗な顔を歪めていた。





猫の姿をしているとはいえ、その姿は妖艶で、恵梨華はそんな葬儀屋をただ見つめる事しかできなかった。





「・・・・っは・・・・・・・ぐッ・・・」





目を開けている事さえ出来なくなった葬儀屋は、苦しそうにギュッと目を瞑った。





そして魔方陣は一層強く光、静かに消えていった。





「はぁ・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・」





中心には元に戻った葬儀屋の姿があった。





余程苦しかったのか、葬儀屋の額からは汗が流れていた。





「お・・・終わったの・・・・かい・・・・?」





霞む視界の中、葬儀屋は自分の手を見た。





それは猫ではなく、葬儀屋の手だった。





元に戻った事に安心したのか、葬儀屋はそのまま意識を手放した。





―バタッ・・!





力を失った葬儀屋の身体が床に崩れ落ちた。





「アンダーテイカー・・!」





恵梨華はセバスチャンの腕の中から抜け出すと、葬儀屋の近くに駆け寄った。





「アンダーテイカー!しっかりして!」





その柔らかな肉球で葬儀屋の身体を揺さぶる恵梨華。
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