短編夢小説V

□美しすぎる美少年
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―チュン・・・チュン・・・





小鳥のさえずりが聞こえる。





「ん・・・・・」





今日も清々しい朝がやってきた。





恵梨華はぐっと伸びをしながら、視線を隣に移した。





「ッ・・・・?!」





寝惚けていた脳が一気に覚醒していく。





恵梨華の目に映ったのは一人の美少年。





眩いばかりの銀色の髪に長いまつ毛。





スヤスヤと気持ち良さそうに眠るその姿はとても美しい。





「(だ、誰・・・!?)」





いつものように葬儀屋と一緒に寝ていたはず。





しかし葬儀屋の姿はどこにもない。





そしてその美少年は何故か裸だった。





「(こんな姿・・・テイカーに見られたら・・・!)」





きっと恐ろしい惨劇になってしまうだろう。





恵梨華は冷や汗を流しながら、顔からはサーッと血の気が引いていった。





「(と、とにかく・・・ここから逃げなきゃ・・・!)」





本能が危険だと言っていた。





恵梨華は少年を起こさないようにそーっと身体をずらしていく。





その時だった。





―パチッ・・・





恵梨華が少し動いたせいで、少年は目を覚ましてしまった。





目と目が合う。





この世のものとは思えないほど美しい黄緑色の瞳だった。





「ッ・・・・・!」





恵梨華はまるで魔法にかかってしまったかのように、その瞳から目が離せなくなっていた。





しばしの沈黙。





すると少年はニィッと不気味な笑みを浮かべた。





「おはよう、恵梨華」





名前を呼ばれた事で恵梨華はビクリと肩を震わせた。





「ど、どうして私の名前を・・・?」





「どうして・・・?ヒッヒ・・・一体何を言っているんだ〜い?」





少年は不思議そうに首を傾げながら恵梨華を見ていた。





「え・・・・その笑い方・・・ひょっとして・・・・・・・アンダーテイカー・・・?」





「ひょっとしなくても・・・小生はアンダーテイカーだよ〜?」





目の前で笑う美少年の葬儀屋、恵梨華はもうその姿から目を離すことが出来なくなった。





「可笑しな恵梨華だねェ〜?悪い夢でも見たのかい?」





未だに自分の姿が変わってしまった事に気付かない葬儀屋。





恵梨華はバクバクと煩い心臓を押さえながら、慌てた様子で鏡を取りに行った。





そして葬儀屋の目の前にバッと突き出す。





「おや・・・不思議な鏡だねェ〜・・・これは小生の昔の姿だ」





葬儀屋は懐かしむかのようにその鏡を見ていた。





「ち、違うの・・・それ、普通の鏡だよ・・・!」





「ふ〜ん・・・なら、小生は昔の姿に戻ってしまったってコトだね。ヒッヒッ」





この異常事態にも関わらず、全く動じない葬儀屋。





それどころか、自分の今の姿を確認すると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。





「それより恵梨華・・・どうして小生は服を着ていないのかなあ〜〜?」





「ッ・・・!///」





恵梨華は顔を真っ赤にしながら慌てて目を瞑った。





「ヒッヒ・・・まさかとは思うけど・・・こ〜んな姿の小生に・・・」





「ち、違うよ!?私は何もしてないよ!?」





「・・・・なぁ〜んだ」





葬儀屋は少し残念そうに笑った。





「と、とにかく・・・服着てよね・・・!」





恵梨華はそれだけ言うと、慌てて部屋を飛び出した。





恋人の可愛らしい行動に、葬儀屋はクスリと微笑んだ。





「ぐふふ・・・慌てちゃって・・・相変わらず恵梨華は可愛いねェ〜?ヒヒッ」





そして葬儀屋は自分の服を着て、恵梨華の待つ店の方へと向かった。
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