短編夢小説V

□情報料は極上の・・・
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「これで5人目・・・か・・・」





無残な惨殺死体を見ながら悲しい表情を浮かべる恵梨華。





そんな恵梨華の隣でアバーラインは悔しそうに目をギュッと瞑った。





「一刻も早く事件解決をしないといけない・・・恵梨華、すぐに聞き込みに行こう」





アバーラインは恵梨華の腕を引っ張り促すが、恵梨華は動こうとしなかった。





それどころか、アバーラインに冷たい眼差しを向ける。





「聞き込み・・?先輩は相変わらずやり方が生ぬるいんですよ・・・」





「なっ・・・・!」





「私は事件解決には手段を選ばない・・・今回はもう勝手にやらせてもらいますよ」





アバーラインに掴まれてる腕を無理矢理解き、アバーラインが行こうとした反対方向へと歩いていく恵梨華。





そんな恵梨華に、アバーラインは声を荒げた。





「自分たちは警察官だ!ちゃんとした正式な捜査をしないと意味が無い・・・!」





その言葉を聞いた途端、恵梨華の足がピタリと止まった。





そして振り向く事無く冷たく吐き捨てる。





「そんなんだから出世しないんですよ・・・アバーライン先輩」





その漆黒の大きな瞳を曇らせながら、恵梨華は再び歩き始めた。





「(こんな悲しい事件・・・もうたくさんだよ・・・)」





恵梨華が向かう先は勿論、あそこしかない。





目的の場所までたどり着いた恵梨華は、店の看板を見上げ小さな溜め息をついた。





「はぁ・・・本当は頼りたくないんだけどね・・・」





これから起こるであろう嫌な事を想像しながら大きく深呼吸をした。





そしてその重々しいドアに手をかける。





―ギィィィィ





耳障りな音を立てながら、ゆっくりと扉が開いていく。





途端に聞こえる不気味な笑い声。





「ヒッヒッヒ・・・いらっしゃ〜い」





不気味な笑みを浮かべながらカウンターに座る葬儀屋。





そしてカウンター越しには自分と向かい合うように椅子が置かれていた。





それはまるで恵梨華の来店を予期していたかのように。





「・・・・そこに座ればいいの?」





相変わらずの葬儀屋に、恵梨華は眉を寄せていた。





「ああ・・・・君だけの特等席だからね。ヒッヒ・・」





恵梨華は再び溜め息をつきながら、カウンターの椅子に腰掛けた。





「早速だけど・・・・ッ」





恵梨華が何かを言いかけると、葬儀屋はその唇に人差し指をそっと当てた。





「言わなくていい・・・恵梨華が何を言いたいか小生にはちゃ〜んとわかっているよ」





カウンターの上に置いてあるビーカーを恵梨華の前に移動させる葬儀屋。





そして懐から骨壷を出すと、カウンターの中央に置いた。





「ヒッヒ・・・クッキーでも食べながらゆっくりと話をしよう」





その言葉を聞いた途端、恵梨華は葬儀屋をギロリと睨み付けた。





そしてカウンターをドンッと勢いよく叩くと立ち上がる。





「もう5人も被害者が出てるんだよ!?ゆっくりしてる暇なんてない!」





怒りを露わにする恵梨華。





しかし葬儀屋が動じる事はなかった。





「・・・・・欲しいんだろう?情報が。・・・なら、分かってるだろう?ヒッヒッ」





余裕の笑みを浮かべる葬儀屋。





恵梨華は深呼吸をして自分を落ち着かせると、再び椅子に腰掛けた。





「それで・・・・今回の情報料は?」





「相変わらずせっかちだねェ〜?ヒヒッ」





「・・・茶化さないで。今回は何をすればいいの?」





真剣な眼差しで葬儀屋を見る恵梨華。





葬儀屋はそんな恵梨華の顎をグイッと持ち上げた。





「そうだなァ〜・・・その可愛い唇が欲しいかな」





「ッ・・・・!///」





恵梨華の顔はカァッと一気に赤くなっていった。





そして葬儀屋の手をペッと払うと、顔をフイッと背けた。





「ほ、他の方法は無いの・・?もしあれだったらアバーライン先輩を連れて・・・・ッ」





ガタッと立ち上がった途端、恵梨華は葬儀屋に抱きしめられていた。
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