短編夢小説V

□夢が現実になる時
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「それじゃあ、行って来るからね」





久しぶりに友達と遊ぶ事になった恵梨華。





「・・・早く帰ってきておくれよ」





既に不機嫌オーラむんむんの葬儀屋に、恵梨華は苦笑いするしかなかった。





「ちょっと食事に行って来るだけだから・・・ね?」





葬儀屋をなだめるように言うが、葬儀屋は口をヘの字にしたままだった。





「恵梨華は小生より友達を取るんだね」





「ほ、ほら・・・お土産にクッキー買ってきてあげるよ?」





葬儀屋の大好物で釣ってみるが、葬儀屋の機嫌は一向に直らなかった。





「じゃ・・・じゃあ・・・・行ってくるね・・・?」





「・・・・・」





とうとう葬儀屋はそっぽを向いてしまった。





恵梨華は小さなため息をつきながら、家をあとにした。





「・・・・・恵梨華・・・」





家に一人残された葬儀屋は愛しい恋人の名前をボソリと呟いた。





勿論その声は虚しく葬儀屋しかいない部屋へと消えていった。





「はぁ〜・・・・暇だねェ・・・」





だるそうにゴロンとベッドに寝転ぶ葬儀屋。





「えっと・・・このボタンを押すんだったね」





ベッドに置かれていたリモコンを手に取ると、テレビのスイッチを入れた。





「・・・・・」





ボーッと一人でテレビを眺める葬儀屋。





その表情にいつもの怪しい笑みはなかった。





「ああ・・・恵梨華・・・」





テレビを見ることにも飽きてしまった葬儀屋は、フラフラとした足取りで部屋を物色し始めた。





するととある物が葬儀屋の目に止まった。





「ん〜・・?コレは恵梨華がいつも使っているモノだねえ?」





普段、葬儀屋には見せてくれない謎の機械。





そう、それは携帯電話だった。





「ヒヒヒッ、一体どんなモノなんだろうね〜?」





葬儀屋に生気が戻った。





いつものようにニヤリと口角を上げながら、携帯電話を手に取る葬儀屋。





まるで食べてはいけない禁断の果実を食べる時のようなドキドキ感。





「ヒッヒッヒ〜、これは小生より友達をとった罰だからね〜♪」





すっかり上機嫌の葬儀屋は、カチャリと携帯電話を開いた。





ぽわっと明るくなる画面。





「おー?」





ディスプレイに表示されているのは恵梨華が愛読している夢小説だった。





きっと閉じるのを忘れていたのだろう。





葬儀屋は、興味津々といった様子でその小説を読み続けた。
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