短編夢小説V
□葬儀屋の適応力
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「アンダーテイカー・・・暇ぁー・・・」
「確かに暇だねェ・・・」
休日、特に出かける予定もなく、だらだらとしている二人。
のんびりとした時間が過ぎていく。
「ん〜・・・何かゲームでもやろうか?」
もそもそと動き出す恵梨華。
葬儀屋はぐったりと横たわりながら、そんな恵梨華を目で追っていた。
「ヒッヒ・・・今日はどんなゲームをするんだ〜い?」
ニィッと口角が上がっていく。
葬儀屋にとって、この世界のゲームは未だに不思議なものだった。
「それじゃあ・・・今日はこの対戦ゲームで遊ぼうか・・!」
―ててーん♪
そんな効果音がどこからか聞こえてきそうなポージングをする恵梨華。
「ぐふふ・・・面白そうだねぇ?」
葬儀屋もやる気になったのか、すくっと起き上がった。
そして当たり前のように恵梨華の隣に腰を下ろした。
「ふふふ・・・恵梨華、このゲーム得意なんだよ?」
「おー?随分な自信だねえ〜?ヒヒッ」
「まぁね・・!コレは一度も負けたことがないからね!」
ニカッと笑う恵梨華に葬儀屋は挑発的な笑みを浮かべた。
「ヒッヒ・・・それなら今日が初めての敗北だね」
「わ、私がテイカーに負けるとでも・・!?」
挑発的な葬儀屋に、恵梨華はグイッと身を乗り出して反論した。
「そんなに自信があるなら・・・何かを賭けて勝負しようか?ヒッヒッ」
「いいねぇ・・・それなら、ポッキーゲームなんてどう?」
「ん〜?なんだい?そのポッキーゲームって言うのは・・・」
葬儀屋は聞き慣れないその言葉に首を傾げた。
「一種の罰ゲームみたいなものだよ。負けた人は勝った人の口に銜えたポッキーを食べるの!」
恵梨華はお菓子箱からポッキーを取り出すと、それを葬儀屋に見せ付けた。
「・・・それ、罰ゲームなのかい?」
「・・・・・さ、さぁ、それよりゲームをしようよ!」
痛いところを突かれ、少し慌てる恵梨華。
無論、ポッキーゲームは罰ゲームなどではない。
恵梨華はただ葬儀屋とポッキーゲームがやりたいだけだった。
その気持ちを悟られないように、必死に隠そうとする恵梨華。
しかし少し慌てた事により、察しのいい葬儀屋はすぐに勘付いてしまった。
「(ぐふふ・・相変わらず君は嘘が下手だねェ〜?ま、そ〜んなトコが可愛いんだけどね)」
恵梨華の顔をまじまじと見ながらニヤニヤしている葬儀屋。
そんな葬儀屋の視線に、恵梨華は気まずそうに顔をそらした。
「よ、よし!ま、負けないよ!」
「ヒ〜ッヒッヒッ、さ〜て?勝利の女神はどちらに微笑むかな?」
ゲームのスイッチを入れ、テレビの画面が切り替わる。
戦いは白熱したものだった。
恵梨華はさすがに得意だと言っただけあって、そのゲームの腕前は相当なものだった。
しかし、初めてプレイするにも関わらず、葬儀屋の腕前は恵梨華を遥かに超えていた。
「ほらほら、次の一撃で勝負が決まってしまうよォ〜?ヒッヒッ」
「や・・・・待って・・・ッ!」
結果は惨敗だった。
負けた事がないゲームでの一方的なゲーム展開。
恵梨華のプライドはズタズタになっていた。
「そ・・・そんな・・・・」
ガクッと肩を落とす恵梨華。
ズーンと暗い空気に包まれる。
「イ〜〜ッヒッヒッ!」
一方、勝者の葬儀屋は楽しそうに高笑いしていた。
同じ部屋にいるのに二人の温度差は相当なものだった。
「―さぁ〜て・・・」
勝利の余韻に浸っていた葬儀屋が、恵梨華の肩にポンッと手を置いた。
恵梨華はビクッと敏感に反応した。
そんな恵梨華の反応を楽しみながら、葬儀屋は恵梨華の耳元に唇を寄せた。
そして甘く低い声で囁く。
「罰ゲームのお時間だよ?恵梨華・・・ヒッヒッ」