短編夢小説V
□死神界に伝わる伝統のゲーム
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「王様ゲーム・・・ですか?」
仕事で一人、葬儀屋のもとを訪れていたセバスチャン。
用件だけ済ませてすぐ戻るつもりだったが、葬儀屋がとあるゲームを提案した。
”王様ゲーム”
その甘美な誘惑は、悪魔といえど、舌なめずりしてしまうほど。
「ヒッヒ・・・・面白そうなゲームだろう?」
「ええ、とても・・・」
セバスチャンはうっとりした表情でにっこりと微笑んだ。
「さて・・・それじゃあ今、主役を呼んできてあげるよ・・・ヒッヒッ」
ニィッと口角を上げ、怪しい笑みを浮かべ立ち上がる葬儀屋。
その時だった。
―バターンッ・・!
店の扉が勢いよく開かれたと思うと、真っ赤な影がセバスチャン目掛けて飛んできた。
「あぁ〜ん☆セバスちゃ〜〜〜んッ!」
「・・・・・」
無言のままソレをヒョイッと避ける。
セバスチャンに避けられたグレルは、盛大に壁に激突した。
無論、顔面からである。
「ブッ!・・・・いったーい・・・・んもう!何で避けるのヨッ」
「おや、グレルさんでしたか。突然得体の知れない気持ち悪い物が飛んできましたので・・・」
「おやおや・・・赤い死神クンまで嗅ぎつけてしまったね。ヒヒッ」
葬儀屋の意味深な言葉に、グレルは首を傾げた。
「ナニヨ・・・嗅ぎつけたって・・・」
「ヒ〜ッヒッヒッ・・」
葬儀屋はグレルに説明する事なく、奥の部屋へと消えていった。
暫くすると、葬儀屋が恵梨華を連れて店内に戻ってきた。
「あれ?グレル?セバスチャン?」
恵梨華は二人を見るなり、目を丸くしていた。
きっと葬儀屋は何の説明もしなかったのだろう。
「ハロー恵梨華☆遊びに着ちゃったわヨ♪」
「これはこれは恵梨華さん・・・そのとぼけたお顔もとても素敵ですよ」
スッと恵梨華の手を取り、その甲に口付けるセバスチャン。
カァッと恵梨華の顔が赤くなっていく。
そんな光景を見ていた葬儀屋は、恵梨華に聞こえないように静かに舌打ちをした。
勿論、悪魔のセバスチャンには丸聞こえである。
葬儀屋の方を見るなり、勝ち誇ったような顔で悪魔笑いを浮かべた。
「そ、それよりアンダーテイカー・・・ゲームってどんなゲームするの?」
「ぐふふ・・死神界に古くから伝わる伝統のゲーム・・・その名も”王様ゲーム”」
「「王様ゲーム?」」
恵梨華とグレルの声がハモった。
「えっ・・・グレルは死神なのに知らないの・・・?!」
グレルと声がハモった事により、驚いた恵梨華はバッとグレルの方を向いた。
「は、初耳のゲームだワ・・・」
死神界に伝わる伝統あるゲームを知らない事でしょんぼりしているグレル。
そんなグレルに、セバスチャンは追い討ちをかけるように畳み掛けた。
「おや?グレルさんは死神界伝統のゲームを知らないんですか?」
「え・・・・そ、そう・・・・みたい・・・」
「それでも死神ですか?それとも・・・伝統すら教えて貰えない程に皆さんに嫌われているんでしょうか?クスッ」
セバスチャンの言葉にショックを受けたグレルはその場に崩れ落ちた。
「で、でも・・・葬儀屋さんが死神をしてたのは昔の話でショ?だったらアタシが知らなくても・・!」
グッと拳を握り締め立ち上がろうとするグレル。
そんなグレルに葬儀屋がとどめの一言を呟いた。
「あのオレンジ君ですら知っていたよぉ〜?ヒヒヒッ」
―ガーン
グレルの頭上から巨大な鉛の塊のようなものが落ちたような効果音が流れた。
グレルは立ち上がる事が出来ず、その場に突っ伏してしまった。
「ふふ・・・」
「イ〜ッヒッヒッ・・・」
店内に葬儀屋とセバスチャンの笑い声だけが響いていた。
あまりにもグレルが可哀相だった為、恵梨華はグレルのもとに駆け寄った。
「二人とも、グレルを苛めちゃダメじゃない・・・・グレル?大丈夫?」
「ア・・・アリガト・・・恵梨華・・・」
グレルが差し伸べられた手を取ろうとしたその時だった。