短編夢小説V

□サディストな葬儀屋はどこまでも生き生きとしていて
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―バババババッ





恵梨華の二丁拳銃が鳴り響く。





ここはロンドンから少し離れた森の中。





ここで激しい戦いを繰り広げている恵梨華と葬儀屋。





二人にとってここは、最高の舞台であり、愛の巣であった。





「ヒ〜〜ッヒッヒッ・・・」





どこまでも楽しそうな葬儀屋の笑い声。





恵梨華の弾を宙を舞ってかわしていた。





「ど〜こを狙っているんだ〜い?ヒヒッ」





一瞬で恵梨華の目の前まで移動すると、持っていたデスサイズで躊躇いなくなぎ払う。





恵梨華はすかさずしゃがんでそれをかわすと、ニィッと不気味な笑みを浮かべた。





「甘いよ、テイカー!」





葬儀屋の肩目掛けて銃を発射する。





「痛ぅ・・・・ッ!」





飛び散る鮮血。





弾は見事に命中し、葬儀屋は痛みに顔をしかめた。





恵梨華は葬儀屋のその表情を見た途端、恍惚そうな表情を浮かべた。





「あぁっ・・・!いいよ・・・その顔・・・・ゾクゾクするよ・・!」





思わず自分の肩を抱き、ふるふると悶えだす。





葬儀屋はそんな恵梨華に、フッと余裕の笑みを浮かべた。





「なんてね」





あっという間に恵梨華の背後に回ると、勢いよくデスサイズを振り下ろした。





「背中ががら空きだよォ〜?」





「・・・ぐっ・・・・!」





恵梨華の背中から真っ赤な血が飛び散った。





恵梨華は眉を寄せながらバッと振り返って構えるが、葬儀屋は大きく後ろに飛び、距離を取った。





激しい戦いが繰り広げ始めてからどれくらいの時間が経っただろうか。





既に辺りは暗闇に包まれていた。





恵梨華の放つ悪魔独特の真っ赤な燐光と葬儀屋の美しい黄緑色の燐光。





何度も何度もその光が交じり合っては離れる。





「ッ・・・・・はぁ・・・・さすがは伝説の死神だね・・・!」





「ヒッヒ・・・っ・・・・君も・・・最上級悪魔なだけは・・・あるね・・・ハァ・・・ッ」





乱れる呼吸が戦いの激しさを物語っていた。





葬儀屋はデスサイズにべっとりと付いている恵梨華の血を人差し指で掬い取った。





そしてペロリとその血を舐め、うっとりとした表情を浮かべる。





「ああ・・・美味しいねェ・・・ヒッヒッ」





形のよい唇が妖しく歪んでいく。





そんな葬儀屋の様子を見ると、恵梨華は悔しそうに舌打ちをした。





「チッ・・・・・私も武器は刃物にすればよかったよ・・・」





「・・・いいよ・・・小生の味を教えてあげる」





葬儀屋は手に持っていたデスサイズを地面に投げ捨てた。





「さあ、おいで・・・恵梨華・・・」





それはどこまでも甘美な誘惑で。





恵梨華はゴクリと生唾を飲み込んだ。





「アンダー・・・テイカー・・・」





両手から自然に銃が落ちる。





恵梨華はまるで魔法にかかってしまったかのように、ゆっくりと葬儀屋に近づいていった。





「恵梨華・・・」





戦いの時とは違う甘い空気に包まれる。





熱い眼差しで見つめ合う二人。





それはまるで恋人同士。





「テイカー・・・」





頬を少し赤く染めながら、ゆっくりと葬儀屋の頬に右手を近づける。





あと少しで触れる、その時だった。





「うっ・・・!」





恵梨華の身体が宙に浮く。





葬儀屋が恵梨華の首を掴み、持ち上げたからだ。





「ヒッヒッヒ・・・だから君は甘いんだよ」





どこまでも冷たく笑う葬儀屋。





恵梨華はギラリと悪魔の瞳を輝かせながら葬儀屋を睨みつけた。





「いいねェ・・・小生は君のそういう表情が見たかったんだ」





まるで恵梨華が苦しむ姿を楽しむ葬儀屋。





恵梨華は意識を失いそうになるのを唇を噛み締めて耐える。





そして最後の力を振り絞り、腰に忍ばせておいた銃を手に取った。





「ッ・・・・・!」





発射された弾は見事に葬儀屋の太ももに命中。





掴んでいた手から力が抜け、恵梨華はドサッと地面に落ちた。
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