短編夢小説V

□全てを狂わせる銀の死神
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「ふぅ・・・今日はこれで終わりだな」





冷たい黄緑色の燐光を放ち、恵梨華は月を見上げた。





「今日は・・・満月か・・・」





優しい光でロンドンの街を照らしている。





そんな月を見ていると、恵梨華の瞳は優しく細められていった。





うっとりとした表情で月を見上げていると、突然、屋根の上に怪しい影が映りこんだ。





「なんだ?アレは・・・」





少し気になった恵梨華はその影に近づいていった。





影の正体は一人の死神だった。





「ヒッヒッヒ・・・君の素敵な狩りの姿・・・見せてもらったよ」





銀色の長い髪をなびかせながら、黄緑色の美しい光を放つ瞳。





―トクンッ・・・





その姿を見た途端、恵梨華の心臓が激しく高鳴った。





「(な、なんだ・・・急に心臓が・・・)」





今までに感じたことがない感情に戸惑う恵梨華。





無言のままその死神を見ていると、その死神は妖しく微笑んだ。





「よかったら小生に君の名前を教えてくれないかい?」





「あ・・・・・恵梨華・・だが・・・・」





その間にも恵梨華の体温はどんどん上昇していった。





「いい名前だ。・・・小生はアンダーテイカー、このロンドンの街で葬儀屋をやっているんだ」





「死神が葬儀屋を・・?・・・随分変わった趣味だな」





すると葬儀屋は被っていた帽子をパッと恵梨華に投げつけた。





「ヒッヒ・・いつでも店においで。・・・・・・可愛いお嬢さん」





その言葉に恵梨華はピクリと眉を動かした。





「なっ・・・・!俺は男だぞ!」





侮辱され、怒りを露わにした恵梨華の目の前に、葬儀屋は一瞬で移動した。





そして愛おしそうにその頬をそっと撫でる。





「恵梨華・ネヴィル・・・君はあのネヴィル家の跡取りだろう?」





「ッ・・・・どうしてそれを・・!」





「可哀相に・・・いくら男が生まれなかったからといって女の子を男として育てるなんて・・・」





ボソリと呟く葬儀屋。





その綺麗な瞳が悲しみの色に染まっていた。





「そ、それってどういう・・・ッ!」





頬に触れられていた手をバッと退けると、恵梨華は少し動揺した様子で葬儀屋に問い詰めた。





しかし葬儀屋はすかさず恵梨華から距離を取った。





「ヒッヒッヒ・・・続きは小生の店でしようか?・・・・・待っているよ、恵梨華」





葬儀屋はそれだけ言い残すと、あっという間に姿を消してしまった。





「なんだったんだ・・・あいつは・・・」





一人ポツンと残された恵梨華は、動くことも出来ずその場に立ち尽くしていた。





「(俺が女・・・?・・フンッ・・・笑えない冗談だ・・・)」





先程まで優しい眼差しで見ていた月をキッと睨むと、恵梨華は死神界へと戻っていった。
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