短編夢小説V
□愛の証
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「愛しているよ、恵梨華・・・」
耳元で囁かれる愛の言葉。
真面目な時にしか出さない葬儀屋独特の低音ボイスが恵梨華の耳をくすぐった。
「う、うん・・・・」
しかし、嬉しいはずの恵梨華の表情は曇っていた。
それに気付いた葬儀屋は不思議そうに首を傾げる。
「ん〜?一体どうしたんだい?」
「あ・・・・い、いや・・・・」
気付かれた事に驚き、恵梨華は困惑した表情を浮かべた。
葬儀屋はフッと笑うと、恵梨華にそっと口付けをする。
「大丈夫・・・悩み事があるなら小生に言ってごらん?」
どこまでも優しい口付けに安心した恵梨華は、その胸に秘めていたものを吐き出した。
「信用・・・・できなくて・・・本当にアンダーテイカーは私のモノなのかなって・・・」
目には涙がたまっていく。
その涙は瞬きと同時に頬を伝っていった。
「ヒッヒッヒ・・・な〜んだ、そんなコトで悩んでいたんだね」
深刻そうな恵梨華とは対照的に、葬儀屋の表情はパァッと明るくなっていった。
「そ、そんな事って・・・!」
自分の悩みを馬鹿にされたと思った恵梨華は、葬儀屋をキッと睨みつけた。
しかし、葬儀屋は恵梨華の頭をわしゃわしゃと撫でるとそのまま立ち上がった。
「今夜、小生の店においで?良いモノを見せてあげよう」
「い、いいものって・・・?」
「ぐふふ・・・小生の君に対する愛の証ってヤツさ」
それだけ言うと、葬儀屋はそのまま店を出ていってしまった。
ポツンと店内に残された恵梨華は、状況が理解出来ていない様子だった。
しかし、店主の居ない店内にいつまでも居るわけにいかず、恵梨華は家へと帰っていった。