超短編夢小説V

□車でイチャイチャしないで
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―キキーッ





目の前に一台の高級車が止まった。





ガチャリと音を立てて運転席から現れたのは銀髪の男。





「ヒッヒ・・・・待ったか〜い?」





袖をヒラヒラしながら笑みを浮かべる葬儀屋だった。





「ア、アンダーテイカー・・!?」





恵梨華は驚いたように目を見開いていた。





葬儀屋はそんな恵梨華を気にする様子もなく、スッと恵梨華の手を取った。





「いつもは運転手クンに任せているけど・・・」





そのまま恵梨華の目の前に跪く。





「恵梨華と二人きりのデートは初めてだからねェ?今日は小生が運転するコトにしたのさ」





ちゅぅっと手の甲に口付ける葬儀屋。





そんな大人の雰囲気を醸し出す葬儀屋に、恵梨華の顔はカァッと赤く染まっていった。





「さ〜あ、お姫様?今日は小生が君の運転手だよ」





助手席のドアを開き、軽くお辞儀する。





それはまるでおとぎの国の王子様のようで。





恵梨華はそんな葬儀屋を直視する事が出来ず、俯きながら車に乗り込んだ。





葬儀屋はそんな恵梨華にクスリと笑いながらも、運転席に座った。





そのまま二人きりのドライブデートが始まった。





恵梨華は相変わらず緊張した様子で下を向いたまま。





葬儀屋はそんな恵梨華の緊張を和らげるように、BGMをかけた。





車内に心地よい音楽が流れる。





「あ・・・・これ、いい曲だね」





「ぐふっ・・・恵梨華の為だけに選んだ曲だからねぇ」





音楽のせいか、葬儀屋の優しさのせいか、恵梨華の緊張は徐々に解れていった。





そして視線は自然と葬儀屋の方へ向けられる。





運転してる姿はとても男らしかった。





「すごいね、アンダーテイカー。運転うまいんだね!」





恵梨華が目を輝かせていると、葬儀屋の左手が恵梨華の髪をすくった。





「やっと・・・こっちを向いてくれたね」





色香のある甘い声で囁かれ、身体が熱くなっていくのを感じる。





「ヒヒヒッ、可愛いねェ〜」





そのまま恵梨華の頬へと手を這わせる。





「ああ・・・・やっぱり運転は運転手くんに任せるべきだったかなァ〜・・」





少し残念そうにその瞳を細める葬儀屋。





「ど、どうして・・?」





不思議に思った恵梨華は首を傾げた。





「だって・・・・」





葬儀屋の手が、するりと恵梨華の太ももに落ちていく。





「片手じゃあ・・・やりにくいだろう?」





するすると内ももを撫でる葬儀屋。





恵梨華は恥ずかしさで胸がいっぱいになり、思わず葬儀屋の手を叩いた。





「バ、バカ・・・ッ!///」





葬儀屋は拗ねたように口元を尖らせていた。





「せ〜っかくの密室なのに・・・コレじゃあ生殺しだねェ・・」





「と、とりあえず・・・前見て運転してよ」





「・・・・小生の目には恵梨華しか映らないよ」





突然真剣な眼差しで恵梨華を見つめる葬儀屋。





一瞬、固まった恵梨華だったが、すぐに我に返った。





「ア、アンダーテイカー!?ま、前見なきゃ・・!」





慌てて葬儀屋の顔を無理矢理前に向かせようと身を乗り出す恵梨華。





葬儀屋はそれを待っていたかのように、左手で恵梨華を抱きしめた。





「ヒーッヒッヒッ・・・・・捕まえた」





慌てて葬儀屋の腕の中でジタバタするが、時既に遅し。





恵梨華は葬儀屋に抱きしめられたまま、身動きが取れなくなってしまった。





「ちょ・・・・放してよ・・!///」





「や〜だね、小生を焦らした罰だよ。・・・・今日は目的地に着くまでこのままだからね」





葬儀屋の吐息が恵梨華の耳元にかかる。





ここは車内で、ガラス張りで。





誰に見られるか分からないこの状況が、恵梨華の羞恥心を煽る。





恵梨華は涙目になりながら耳まで真っ赤に染めていた。





「っも・・・・・放してぇ〜〜!」





叶う事のないその願いは、甘いムードの漂う車内に消えていった。



-END-

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