短編夢小説T

□死神の一手
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「いるか?アンダーテイカー」





「・・・・・・ようこそ伯爵。やっと小生特製の・・・」





アンダーテイカーはそこまで言いかけるとやめてしまった。





「(今の間はなんだ・・・)恵梨華とチェスしにきたんだ。恵梨華はいるか?」





「伯爵・・・最近頻繁すぎないかい?」





「そうか?」





シエルは悪びれもせず、カウンター越しの柩の上に腰掛けた。





セバスチャンはそのやり取りを面白そうに見ていた。





「では、私がお嬢様を呼んで参りますので」





軽く胸に手を当て一礼するセバスチャン。





「小生が呼んで来るからいいよ!」





アンダーテイカーが慌てて言った。





すると奥の方から恵梨華がやってきた。





「アンダーテイカー?どうしたの?あっ!シエル!」





「騒がしくてすまないな。コイツがいきなり怒鳴りだしたんだ」





「(小生を悪者にする気かい!?)」





「それより恵梨華、チェスしないか?」





「する!」





「では坊ちゃん、早速準備致します」





「あぁ。・・・・・それよりアンダーテイカー、何故お前がそこに座っている」





「・・・小生がどこに座ろうと小生の勝手だろう?」





不機嫌オーラが漂うアンダーテイカー。





「ほら恵梨華、チェスなら小生の膝の上に座っておやり?」





「あ、うん!」





恵梨華は素直にアンダーテイカーの膝の上に座った。





すると先程まで不機嫌だったアンダーテイカーの機嫌が急によくなった。





対称的に、ため息をついて不満そうな表情をしているシエル。





「坊ちゃん、そんな顔をしているとお嬢様に嫌われてしまいますよ?」





クスリと笑うセバスチャン。





シエルは少し頬を赤らめながらセバスチャンを睨んだ。





「ただでさえ坊ちゃんは無愛想ですから」





「だ、黙れセバスチャン!」





「シエルー、早くやろう?」





二人の会話を大人しく聞いていた恵梨華が口を開いた。





待ち切れない様子で口元を尖らせ拗ねていた。





「あ、あぁ。では僕から」





それから店内には静かな時間が流れた。





「う〜ん・・・」





いつもの如く、シエルが優勢だった。





「恵梨華?これをここに動かしてごらん?」





アンダーテイカーが恵梨華の耳元で囁いた。





「これ?えいっ!」





「っ・・・!」





シエルは驚いたような表情を浮かべている。





アンダーテイカーが指示した一手で形勢逆転してしまった。





シエルは真剣に次の一手を考えていた。





アンダーテイカーは口角を上げ満足そうに笑っていた。





「アンダーテイカーすごいね!」





恵梨華がアンダーテイカーの耳元で小さな声で言った。





「ヒッヒッヒ・・・小生は伯爵には負けないよぉ?」





「今度恵梨華にもコツを教えてね」





「ああ・・・いつでも教えてあげるよ」





二人が会話してる間もシエルはチェス盤を見つめて悩んでいた。





暫く悩んだあと、シエルはナイトを動かした。





「うー・・・シエルは強いなぁ・・・・」





形勢逆転したとはいえ、相手はシエルである。





恵梨華はどうすればいいのか分からず、頬杖をついて考えていた。





するとアンダーテイカーが後ろからビショップを動かした。





「チェックメイト。ヒッヒッヒ」





楽しそうにシエルの顔を見るアンダーテイカー。





「なっ・・・!アンダーテイカー!お前・・・!」





「わー!アンダーテイカーすごい!」





恵梨華はチェス盤を見ながら目をキラキラと輝かせていた。





アンダーテイカーはそんな恵梨華の頭を優しく撫でていた。





「さっきの一手もお前の入れ知恵だったのか・・・!」





「ヒッヒ・・・さぁて?一体何の事だろうねェ?」





怪しい笑みを浮かべるアンダーテイカーをシエルは睨みつけていた。
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