短編夢小説T
□死神の契約
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「わぁ・・・!年賀状いっぱい来たね!」
恵梨華はポストに入っている年賀状を見ながら店内へと戻った。
「ヒッヒッヒ・・・よかったねェ?」
アンダーテイカーはいつも通りカウンターの椅子に座っていた。
カウンターに両肘をつき、満足そうに恵梨華を見ていた。
「あ・・・リアちゃん結婚したのかぁ〜、幸せそうな顔だなぁ♪」
友達の幸せそうな顔を見て、思わず恵梨華も優しい笑顔になった。
「あっ・・エイミーも結婚かぁ〜♪」
一枚一枚年賀状を確認する恵梨華。
「セリアも・・・シェリーも・・・コレットも・・・結婚かぁ・・・」
先程まで満面の笑みを浮かべていた恵梨華だったが、その表情は徐々に曇っていった。
必死に笑顔を保とうとしていたが、その笑顔は痛々しいモノだった。
恵梨華の異変に気がついたアンダーテイカー。
椅子から立ち上がると、恵梨華の下に来ていた。
「どうしたんだい?」
そっと頭を撫でながら問いかけるアンダーテイカー。
「なんか・・・羨ましくて・・・」
弱弱しく言う恵梨華。
「恵梨華には小生がいるだろう?」
何を羨ましがっているのか分からないアンダーテイカー。
指を唇に当て、首を傾げていた。
「う、うん・・・そうなんだけど・・・」
恵梨華はその場に崩れるように座り込んだ。
「私達死神だから・・・結婚出来ないなって・・・」
「ヒッヒ・・・そんな事を悩んでいたのかい?」
アンダーテイカーはふわりと恵梨華の前にしゃがむと、恵梨華の頬にそっと触れた。
「そんな人間たちのちっぽけな決め事なんて気にする必要はないさ」
「でも・・・!」
「結婚なんてしても・・・離婚できるだろう?」
「ま、まぁ・・・」
アンダーテイカーは口角を上げ、ニタリと笑った。
「恵梨華が望むなら・・・死神の契約をしようじゃないか」
「死神の契約・・・?」
「ああ・・・伯爵と執事君が結んだ悪魔の契約は知っているだろう?」
「う、うん・・」
「小生たち死神にも似たような契約があるのさ・・・」
アンダーテイカーは恵梨華を立たせると、奥の部屋へと案内した。
ズラリと本が並ぶ書斎。
アンダーテイカーはそこから一冊の古い本を取り出した。
ペラペラとページをめくり、あるページを開いて恵梨華に見せた。
「見てごらん?」
恵梨華は目を見開いて食い入るようにそのページを見ていた。
「すごい・・・こんな契約があったなんて・・・!」
恵梨華は目をキラキラと輝かせていた。
そんな恵梨華を暖かい目で見つめるアンダーテイカー。
「ただ・・・人間たちの決め事と違って、一度契約したら二度と取り消しは出来ないよぉ・・?」
永遠の時を生きる死神達。
その契約を結ぶという事は、永遠にその契約に縛られるという事だった。
互いから逃れる事が出来ない契約。
どこにいても、どんなに逃げようとも、お互いの場所が手に取るように分かる。
消える事のない、永遠の愛の証・・・。
「アンダーテイカーとなら・・・いいよ」
恵梨華は静かに言った。
アンダーテイカーはそれを聞くと、満足そうに微笑んだ。
そして帽子を取ると前髪をかき上げ、再び帽子をかぶった。
「さあ・・・準備をしようか」
アンダーテイカーは書斎の机に爪を立てた。
器用にその爪で本に記された通りの魔方陣を描いていく。
「恵梨華・・・デスサイズをここに置いてごらん?」
アンダーテイカーは自分の大鎌のデスサイズを先に机の上に置いた。
続くように恵梨華もアンダーテイカーのデスサイズの上に置いた。
交差するように重ねられた二本のデスサイズ。
そしてアンダーテイカーはどこから取ってきたのか、真っ白な二輪の薔薇を取り出した。
「恵梨華・・・小生との永遠の愛を誓うかい?」