短編夢小説T

□死神に恋した悪魔
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「ねぇセバス・・・」





恵梨華は真夜中、セバスチャンが仕事を終えて暇な時間にシエルのお屋敷に来ていた。





「どうしました?深刻な顔をして・・・」





「セバスはさ、シエル君の事をどう思ってる・・?」





「坊ちゃんの魂は・・・それはもう美しく・・・」





セバスチャンがそう言いかけると恵梨華はセバスチャンの言葉を遮るように言った。





「やっぱり魂としてしか・・・見てないよね・・・」





「・・・?」





「悪魔にとって魂はただの食事・・・だもんね」





「恵梨華・・・何か悩み事でもあるのですか?」





「恵梨華ね・・・この前皆で会いにいったアンダーテイカーの事が好きみたいなの・・」





「(やはりですか・・・あの方も満更ではない様子でしたしね・・)」





セバスチャンは悔しくて心の中で舌打ちをした。





「・・・あの方は死神ですよ。私達悪魔を害獣と呼び、忌み嫌う存在・・・」





セバスチャンが言うと恵梨華の瞳には大粒の涙がたまった。





「(あぁ・・・貴方のそんな顔など見たくはない・・・)」





「害獣・・・かぁ・・」





恵梨華は落ち込んだように下を向いた。





「死神には死神が、悪魔には悪魔の恋人が相応しいかと・・・」





遠まわしに恵梨華には自分が相応しいと主張するセバスチャン。





しかし鈍感な恵梨華がそれに気づく事はなかった。





「うっ・・・うぅ・・・」





恵梨華は静かに泣き出した。





綺麗な紅茶色の瞳から零れ落ちる涙。





頬を伝い、服を濡らしていく。





セバスチャンはそんな恵梨華を見ていられなくなり、思わず抱きしめた。





「あぁ・・・泣かないでください、恵梨華・・・」





落ち着かせるようになでなでと頭を撫でる。





しかし恵梨華の涙は止まらなかった。





セバスチャンは恵梨華が泣き止む方法、そして恵梨華を手に入れる方法を考えていた。





そしてある事を思いついた。





静かにニヤリと悪魔笑いを浮かべた。





「恵梨華、葬儀屋さんを振り向かせる方法がひとつだけありますよ」





「ほんと・・?」





セバスチャンの言葉に思わず顔をあげる恵梨華。





潤んだ純粋な瞳。





セバスチャンは思わず見惚れてしまう。





「・・・えぇ」





「どうすればいいの!?」





「簡単な事です。葬儀屋さんは死体の検視がご趣味とか・・」





恵梨華はセバスチャンの話を食い入るように聞いていた。





「だから、毎日プレゼントしてあげればいいんですよ・・・それもとびっきりの惨殺死体を・・・」





「そ、そっかぁ・・・!セバスは頭いいね!」





先程まで泣いていた恵梨華の顔がパァッと明るくなった。





そんな素直に自分の話を信じる恵梨華に、セバスチャンは少し胸が痛くなった。





しかし今更引く訳にはいかない。





「それも、葬儀屋さんの身近な人がいいですね。例えば店を訪れた方・・・とかね」





「うんうん!分かったよ!」





セバスチャンは恵梨華に止めを刺すかのように、姿をアンダーテイカーに変えた。





「小生に素敵な惨殺死体をありがとう、大好きだよ恵梨華」





勿論声はセバスチャンのままだったが、恵梨華の頬は真っ赤に染まっていた。





そんな恵梨華の反応を見て、セバスチャンは元の姿に戻った。





蝋燭の光が怪しく揺らめいた。





「最初は恵梨華からのプレゼントだと言う事を内緒にしておいた方がいいですね」





「どうして?」





「ふふ・・・すぐに明かしてしまっては面白くないでしょう?謎の方からの素敵な贈り物・・・の方がね」





「おー!さすがセバス!」





恵梨華はセバスチャンを尊敬の眼差しで見ていた。





セバスチャンはそんな眼差しに少し苦笑いしていた。





「本当にありがとうね!セバスに相談して本当に良かったよ!」





「恵梨華が喜んでくれて私も嬉しいですよ」





「大好き♪」





恵梨華は満面の笑みを浮かべてセバスチャンに抱きついた。
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